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» 2008年05月13日 10時55分 UPDATE

おもしろさは誰のものか:違法と合法の敷居があいまい──作り手から見た「YouTube」、ガイナックスに聞く (2/3)

[取材・文:堀田純司 写真:金澤智康,講談社Moura ザ・ビッグバチェラーズニュース]

 そこは線引きするのが難しいところです。どうせ買わない人は買わないからいい、という考え方もあります。しかしYouTubeの問題は、違法と合法の敷居があいまいになっているところだと思うんですよ。敷居があいまいになってユーザーのモラルが下がってしまうというのが、一番怖いところですよね。

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 違法コピーが直接的に我々の市場に影響はないだろうとしても、たとえば最初から有料配布を前提に、品質的にも有料に見合うようにお金も努力もかけてつくられたOVA作品が発売日の翌日に、もうYouTubeに上がってですね。で、それをさらにコピーして海賊版がネットオークションで売られている状況は、あれはちょっと目を覆いたくなるような感じがします。

 それに、そうした状況があるのは、ちゃんと買ってくれた人に申し訳ないと思うんですよ。やっぱり買った人がバカを見た気分になるじゃないですか。正規版を買った人が損をした気分になる世の中は、あまりいいもんではないと思うんです。

 だから商業的には実害はなかったとしても、気持ちの問題はありますねえ。仮に自分の土地じゃなくても、立ちションを見るのは気持ちのいいものじゃないじゃないですか。お金出して正規版を買った人が「俺YouTubeで観たけど、あの作品はこうだった」って言われたら、釈然としないですよね。

――それは納得いきませんね。

 アニメーターであれ、資金提供した企業であれ、作品というものはすべからく「つくり手」がいて、「誰かのもの」ではあるわけです。なにもかもがネットで無償で提供されることの是非は簡単に判断できないんですが、ただ、所有者でない人が無断で「他人様のもの」をばら撒く、というのはどうなんですかと。被害という面からはなくて、それでネット上の注目を集めたいと考える、そのモラルの低さ、幼さに気が滅入ります。

 それに、やっぱりこれはもう、純粋につくり手側の勝手な言い分かもしれないんですけど、YouTubeで「エヴァンゲリオン」の劇場版を観たら、損だと思うんですよ。いや、別に大スクリーンだとか、おっきい100インチ液晶で観ろということではなくて。しかしその……、きっちりとした絵で観てもらったときの最初のインパクトを、アニメでは楽しんでもらいたいなあ、っていう気持ちはありますね。

 つくり手は観てもらうメディアを考えてつくっていますから、あるべきメディアで観てもらうのがアニメは一番楽しいはずなんですよ。もちろん軽く観るアニメもありますし、それを決めるのはお客さんのほうなのですが、つくり手側としては視聴者に観てもらうところまで含めた「演出プラン」があるわけです……。

 観る環境やらタイミングやら含めて「劇場版」は劇場で観るのが一番面白いようにつくってあるし、DVDはパッケージや解説書まで含めて作品全部をより深く楽しんでもらえる仕掛けもしてある。だから、「つくり手」の「演出プラン」をぶち壊しにする行為には腹は立ちます。

 誰も彼もがネットでの発信者になれるようになって、まだ10年ですよね。高品質の動画まで配信され始めてそろそろ5年。DVDを売って資金回収するというモデルを見直さなければならないところに来ているのは確かですが、まだ僕ではその打開策というのは全然判らない。ただ、「無料万歳」で既存のビジネスモデルを性急に破壊してしまったら、少なくとも今の形で制作されているような作品の多くは、制作されなくなっちゃうでしょうね。

魂に届くかどうか

――映像の場合は作品そのもののパッケージ化ですが、キャラクター商品など、作品の二次使用の場合は、また違う考え方があるものなのでしょうか。

 アニメ作品の面白さを、いかに商品に乗っけていくか。そこのところで頑張っていきたいなとは思っています。後は、「いいじゃないか、減るもんじゃなし」という言葉がありますけど、キャラクターの魅力って、ライセンスの使い方を間違えると、減ってしまいます。

――「グレンラガン」の場合、コナミがスポンサーであるにも関わらず、海洋堂からも商品が出て、ワンダーフェスティバルでも大人気でした。

 やはり海洋堂さんなんかは、非常にファン気質が高いところなので、自分たち自身で「グレンラガン」を盛り上げたいというような気分でものをつくっていただけている。そういったところに参加していただけるのは、ものすごいうれしいですよね。

 海洋堂さんが展開しているリボルテック(*可動部分が多いアクションフィギュアシリーズ)は、アニメの製作側とはまた別の流れでおもちゃをシリーズ化して、ロボットのキャラクター性をうまく出していってくれている。今では、リボルテックになるぐらいだから、そのアニメは面白かったんだなという見方すらされています。そうしたシリーズに「グレンラガン」をピックアップしていただいたのは、すごくうれしかったですね。

 「エヴァンゲリオン」という作品の商品展開がうまくいった理由のひとつに、商品化権があるメーカーに独占されなかったことがあげられると思うんですよ。複数のメーカーから商品が出たおかげで、空白の期間が出ないように、かつ商品間でバッティングが起きないようにジャンルも調整しながら、欲しがる方々にいろいろな商品を提供できた。それはいろいろなメーカーさんにご協力をいただいたからこそ、やれたことでした。

 バンダイさんとかセガさんなど、大手メーカーが参入しているにも関わらず、他社さんからも商品が出せた。ガレージキットでも、「エヴァンゲリオン」は全メーカー制覇みたいな形になりましたが、そうした前例をつくることができたのは、ライセンスの世界にとってかなり大きな貢献だったかなと、思います。

 やっぱりね。メーカーさんにもそれぞれのよさがありますから、メーカーのよさが本来の形で商品に出た場合、商品同士は競合しないはずだと私は考えてます。

――継続的に、アマチュアにも版権を許諾していますね。

 アマチュアとメーカーの両方に許諾しているわけなんですけど、それぞれスタンスは違いますよ。

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