蝶やクジラなどの絶滅危惧(きぐ)種を、捕獲せずに識別、観察できるシステムを英ブリストル大学が開発した。
このシステムは野生動物の生息地域に目立たず設置でき、絶滅危惧種の個体群動態や社会的行動をつぶさにとらえられるというもの。同校は南アフリカのロッベン島に、アフリカペンギンを観察するためにこのシステムを設置した。このプロジェクトは「Penguin Recognition Project」と呼ばれる。
アフリカペンギンは前世紀の初めは100万頭以上いたが、現在は17万頭弱に減少しており、うちロッベン島には約2万頭が生息する。タグを付ける従来の手法では数頭しか観察できないため、Penguin Recognition Projectでは画像認識技術を使って自動的に観察できるシステムの開発を目指している。
同プロジェクトでは、カメラを搭載したシステムをアフリカペンギンの生息地域に設置している。アフリカペンギンはそれぞれ胸の模様が異なり、模様は一生を通じて変わらないため、それを個体識別の手掛かりとし、画像認識システムでカメラに写ったペンギンをリアルタイムで特定する。画質が良ければ、98%の信頼性で個々のペンギンを特定できるという。ただし現在のシステムはカメラを1台のみ搭載しているため、ペンギンがカメラの前を通過する際にほかのペンギンの陰に隠れたりする場合や、光が弱いときには信頼性が落ちる。研究者らはこの問題を克服するために、パン・チルト・ズームができるカメラや赤外線映像に取り組んでいる。
このシステムはシマウマやサメなどの観察にも試験的に利用されている。原理上は、体表面に複雑な模様のあるあらゆる動物に利用できるという。
この技術は6月30日から7月3日にかけて開催されるRoyal Society Summer Scienceで披露される。
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