プライバシーをめぐる米Googleへの風当たりは強い。Googleは二枚舌だという政治家や評論家もいる。あるプライバシー監視団体は、Googleの衛星画像ソフトを使ってGoogle自らを標的に据えたらどうなるか、実験を試みた。
非営利組織のNLPC(National Legal and Policy Center)は、カメラと衛星画像で地球上のロケーション分布を示すGoogleのアプリケーションStreet ViewとGoogle Earthを使い、カリフォルニア州パロアルトにあるGoogle取締役の自宅をピンポイントで突き止めてみせた。
NLPCは30分足らずで、Google取締役の自宅の門と、その前に停めてある車のナンバープレートを表示させた。通りから玄関までの距離も示し、5マイル離れたマウンテンビューのGoogle本社へ行くのに使っていると思われるルートも突き止めた。
NLPCはこの調査結果をサイトに掲載した。
NLPCの実験は、このほどGoogleがペンシルベニアの裁判所に提出した書面で「プライバシーは存在しない」と主張したことを受けて行われた。Googleの書面はThe Smoking Gunのサイトに掲載された。
Googleの書面は、ペンシルベニア州のアーロン、クリスティーン・ボーリング夫妻から起こされたプライバシー侵害訴訟に対する反論として提出されたもの。ボーリング夫妻は訴訟の中で、360度のパノラマカメラを搭載したGoogleの車両が私道に乗り入れてきて自分たちの家の写真を撮ったと主張している。
Googleは、ボーリング夫妻宅の私道に入って写真を撮ったことは認めながら、「現代の衛星画像技術では、現代の砂漠においてさえも完全なプライバシーは存在しない」と主張。
書面では、Googleが写真を撮った場所から見たボーリング邸の光景はプライベートなものではなく、衛星画像で既にこの家の同じような写真が出ていると反論した。
Google広報は8月1日、「砂漠」の意味について次のように弁明した。「この訴えに根拠がないと当社が考える理由を表現し、反論を形成する一助としてこの言葉を使った。プライバシーに対する当社の全般的な見方を示す文言と解釈されるべきではない。Googleが個人のプライバシー権を尊重していることははっきりさせておきたい」
しかしNLPCはGoogleの書面のこの文言について、プライバシーに対する真剣な取り組みをアピールしている公の姿勢とは矛盾すると指摘した。
NLPCのケン・ベーム会長は談話の中で次のように述べている。「多分Googleの世界ではプライバシーは存在しないのかもしれないが、実世界では個人のプライバシーは根本的に重要なものであり、Googleのような企業によって日々少しずつ侵食されている。Googleの偽善には圧倒される」
Googleはプライバシー保護と侵害の間の一線をまたぐ位置に立っている。
米国議会に呼び出され、検索やGmailなどのアプリケーションで収集したユーザー情報をネット広告ツール強化の目的でどのように活用しているのかについて説明を求められることがある一方、Google Street ViewとGoogle Earthは米国内外で最大のプライバシー侵害だと市民に非難されている。
Street Viewでは住所で示された場所をネットで見つけられるようにするため、ワゴン車を送って住宅地の写真を撮らせている。
このアプリケーションはGoogle Earthに組み込まれている。Google Earthは衛星から撮影した画像や航空写真を重ね合わせて地球の地図を作成した仮想世界プログラム。
政治家はこのアプリについて、プライバシー侵害として扱うか、それとも有用な情報を収集できるツールとして扱うか、まだ態度を決めかねている。
プライバシーはあいまいな問題だ。衛星画像技術と、収集した画像をWebに掲載して世界に提供できる能力のおかげで、Googleはプライバシー規定違反を犯していないことを証明しようとして動きが取れなくなっている。
Googleお抱えのプライバシー保護専門家であるピーター・フライシャー氏などは、Googleはプライバシーに対して非常に真剣だと言い続けている。しかしほかの幹部がそれを台無しにしてしまうことも時にある。
例えばNLPCが述べているように、Googleエバンジェリストのビント・サーフ氏(世間にはインターネットの父として有名)は5月に「自分がやったことは取り消せない。自分がやったことが見逃されることもない。プライバシーなど存在しないのだ。割り切った方がいい」と発言した。
ただし前後の脈絡なく引用された1つの発言だけで、プライバシーをめぐるGoogleの立場が崩れることはないともNLPCは指摘している。
サーフ氏は、Sun Microsystemsのスコット・マクニーリー前CEOをはじめ、インターネットで長年の経験を持つハイテク業界幹部たちの考えを繰り返したにすぎなかった。
インターネットはほとんど制約がない恐ろしくパワフルなツールだ。そこに掲載される情報量が増えるほど、情報利用の在り方に異議を唱える訴訟の数も増えるだろう。
ひいてはプライバシー法や憲法の改正につながるかもしれない。
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