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網膜ディスプレイ、ブラザーが2010年に発売へ

» 2008年09月04日 16時19分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 手に持った端末に光源モジュールと電源を内蔵。眼鏡部の光走査モジュールに光を送る

 ブラザー工業は、網膜に光を当てて映像を映す、眼鏡型の網膜走査ディスプレイ(RID:Retinal Imaging Display)を2010年に発売する計画だ。まずは法人向けに展開し、ディスプレイに回路図を投影しながら工事したり、カルテを映しながら手術するといった利用を見込んでいる。

 9月4日に東京で開いたプライベートショー「Brother World JAPAN 2008」(東京国際フォーラム)でモックアップを展示した。

 RIDは、目に入れても安全な明るさの光を網膜に当て、その光を高速に動かすことによる残像効果を利用し、網膜に映像を投影する技術。

 従来のヘッドマウントディスプレイと異なり、目に直接光を当てるため、小型液晶ディスプレイなどはなく、眼鏡型といってもレンズもない。目の前にあるのは透過型の反射板だけ。映像の向こうには外の景色が透けて見える。

画像 装着時のイメージ

 眼鏡に装着する投影部は25グラムと軽く、かけると60センチ手前に14〜15インチサイズのディスプレイがあるように見える。試作機の表示解像度は800×600ピクセル、フレームレートは60fps。液晶ディスプレイやCRTディスプレイよりも広い色域を再現し、高画質な映像を表現できるという。光はごく弱く、消費電力を低く抑えられる。

 プリンタ開発で培った技術を生かした。網膜に光を当てる仕組みは「レーザープリンタの感光体が、目に代わったというイメージ」(説明員)という。

画像 光MEMS

 インクジェットプリンタのピエゾ技術を活用して高速・小型のミラーデバイス(光MEMS:Micro Electro Mechanical Systems、微小電気機械システム)を開発し、小型化と高画質化を両立させた。端末サイズは、2005年の愛・地球博に出展した試作機(光源部の重さ100キロ、光走査部70キロ)の1000分の1に縮小している。

 商品化時の価格は未定。まずは業務用途で販売し、量産・低価格化のめどが付けば個人向けにも発売する考えだ。個人向けには、移動中に映画を見るといったエンタメ用途のほか、移動中の新幹線や飛行機で、PCを使って機密性の高い仕事をする際、のぞき見されないセキュアなディスプレイとして利用するいった用途を考えている。

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