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「日本人が優しすぎるから」――ニコ動で“育つ”香港の歌姫(2/3 ページ)

» 2008年09月05日 15時46分 公開
[岡田有花,ITmedia]

300円のマイクで「歌ってみた」

 といっても機材もないし、録音法もよく分からない。日本円で300円ほどの簡易マイクをPCのマイク端子につなげ、歌を歌って吹き込んだ。自画像を描いたイラストに日本語の文字を添え、PhotoshopとWindows Movie Makerで動画を作った。ただ感動を伝えたかった。

 歌い終えた後、こんなメッセージを吹き込んだ。「私だって日本のみなさまのことが大好きだから。サーセン」

 日本語も歌も下手だと思っていたし、音も悪かった。1000人も聴いてくれれば十分だった。だが再生数はすぐ1万を超え、2万、4万を超えた。9月5日までに10万回近く再生されている。「本当に、びっくりしました」

 「かわいい」「萌える」「うまい」――たくさんの優しいコメントに感動した。この動画がきっかけで日本人から連絡をもらい、友だちもできた。

 うれしくて歌い続けた。次に投稿したのが「メルト」。自作の絵で動画も作った。何万回も再生され、温かいコメントがたくさん付いた。

 本当にうれしくて、うれしい気持ちを伝えたくて、また歌った。大好きな「想い出がいっぱい」を日本語と広東語で。動画にはメッセージを書き、ありがとうの気持ちを伝えた。「ニコニコ動画に来て、世界が近くなった」「ニコニコ動画でたくさん友だちができて、本当にうれしいです!」

 ニコニコ動画のコメントは、歌の先生にもなる。「コメントの批評はちゃんと受け取って、直せるように頑張っています」。「うまくなったね」「成長早い」――最近の動画にはそんなコメントも多い。ほめてもらうとうれしくて、もっと頑張ろうと思う。

 台湾の友人に教えてもらい、mixiも始めた。300人以上のマイミクに、毎日の生活や歌への想いを伝える。「mixiのおかげでたくさんの日本のお友だちが増えて、ファンのみなさんから応援ももらえて、みなさんとの距離が近くなりました」

「みんなに届けたいから、感情を込めて歌います」

画像 ほんこーんさんが歌を吹き込む時に使っているマイク

 「この子、練習したらすごくうまくなる」――ほんこーんさんの「ニコニコ組曲」を聴き、そう確信した日本人の男性がいた。NNT団の1人・あてっくすさん(31)だ。音楽大学で声楽を学び、卒業後はIT企業勤務。何人かのニコニコ動画の歌い手に、趣味で歌を教えている。

 ネットで声をかけ、メッセンジャーを使って歌を基礎から教え始めた。ほんこーんさんには、音楽の知識はほとんどない。五線譜も読めないし、鍵盤を見ると「頭が痛くなる」というが、あてっくすさんはその成長の早さに舌を巻く。「普通の子が2〜3年かかることを数カ月でマスターした。歌で一番難しいのは感情表現だが、彼女は高度な感情表現をさらっとやってのける」

 感情――ほんこーんさんが一番大切にしているものだ。「感情がこもっている歌こそ、みんなの心に届くと思います。感情を受け取ってもらった時が一番うれしい。私の歌はみんなの心に届けたいから、頑張って感情を込めて歌います」

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