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「日本人が優しすぎるから」――ニコ動で“育つ”香港の歌姫(3/3 ページ)

» 2008年09月05日 15時46分 公開
[岡田有花,ITmedia]
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 詞の世界に入り込めずに悩むこともある。韓国のりるさんと一緒に歌った「peace of the world」。世界への愛というテーマが大きすぎ、うまく感情を込められずに泣いた。詞を香港の社会に置き換えて考え直し、自分の世界を作り、やっと歌えた。

 歌を聴いてよく泣くし、歌いながら泣くこともある。テクニックの練習をする時間より、歌詞の意味を考える時間の方が長い。「初音ミク曲を好んで歌うのは、ミクの声に感情がないから、どう歌っても“正解”だからでは」――あてっくすさんはそう話す。

 毎日歌を練習する。筋トレと発声練習、歌の世界を理解するための、歌詞を深く考える練習。ボイストレーニングも始めた。

 投稿する歌を決めたら、詞の内容を深く考えながら、1週間ほど練習。歌に自分の気持ちを合わせ、3時間程度かけて録音する。ダメならまた、体調と気持ちが合う日に録り直す。

歌手になりたい

画像 ぼろぼろになるまで練習した「つきうさぎ」の歌詞カード。緑で漢字の発音を、青で曲のストーリーを書いた

 「歌手になりたい」――そう思い始めたのは最近だ。「音楽が好きになったから。音楽の作り手の気持ちも、分かるようになってきた。私の歌を聴いて作り手が喜んでくれたら、歌ってよかったと思う」

 最近歌った初音ミク曲「つきうさぎ」(OSTER Project作詞作曲)。泣きながら歌った。「天才しか作れない曲。つきうさぎを聴いて、歌詞を読んで、音楽はすばらしいと思った」

 NHKの番組「ザ☆ネットスター」でもつきうさぎを歌ったが、「緊張して声が出なかったし、あんまり感情も入れられなかった」と残念がる。

 「顔が可愛くなくて、歌も上手くいけなくて、ファンの皆さんが失望するかもしれない…本当に、すみません。私、もう頑張ったから…(つω⊂) 嫌がれないでください…(;ω;)」――ブログにはそんなふうに書いている。

「歌うことしかできないから」

 夏休みが終わり、新学期が始まった。香港の学校は勉強が一番。勉強ができなければ落ちこぼれ扱いで、音楽や美術はほとんど重視されないところが嫌いだという。

 「先生に『歌手になりたい』とか『漫画を描きたい』と言ったら、『目を覚まして勉強しなさいよ』と言われて」

 両親は彼女の歌が好きだ。「父は私の歌をYouTubeで探してきて、家で大きな音で聴いています。母はよく周りの人に聴かせていて恥ずかしい」

 自分の歌が自分でも好き。投稿した曲も、ずっと自分で聴いている。「再生数、自分で増やしてる(笑)」

 歌いたい曲はまだまだあるが、受験生だからなかなか時間を取れない。日本の大学に行くことは親に反対されたから、香港の大学を目指している。でもいつか、日本に留学したい。そしていつか、歌手になりたい。

 「日本のファンにメッセージはありますか?」――そう聞くとしばらく黙ってしまい、涙を流し始めた。

 「みんな優しすぎて……感動する。私はふつうの学生なのに……こんなに人気な人になると思ってなかった。みんなに愛されることにすごく感動する。みんな大好き」

 「私は歌うことしかできないから、私の歌でお返しできれば」

 ほんこーんさんが出演する「ザ☆ネットスター!」は、9月5日の深夜12時(9月6日0時)にBS2で放送、9月7日の午後11時50分からBS hiで再放送される。

 テーマは「ねとすた秋祭り!第1回タレコミランキング」で、視聴者からの“タレコミネタ”を紹介する。ゲストは声優・歌手の桃井はるこさんと、法政大学の白田秀彰准教授。


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