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漫画の“マイナーリーグ”を――新人発掘サイト「DreamTribe」

» 2008年10月21日 15時09分 公開
[宮本真希,ITmedia]
画像 DreamTribe

 漫画家としてメジャーデビューし、雑誌の連載を勝ち取るのは難しい。小学館が発行する17誌のうち、最も多い編集部の場合で、毎週20人ほど、漫画家志望の人が作品を持ち込んでいるという。半年ごとに開催する「小学館新人コミック大賞」には3000作の応募が寄せられる。だが、実際にデビューできるのは、17誌合わせて年間数十人ほど。そのうち、雑誌連載に至るのは半数以下だ。

 デビューする素質があっても、作品を持ち込んだ先のコミック誌と作風がマッチしなければデビューにつながらない可能性もある。「デジタルツールの普及などによって、制作環境が整い、漫画に限らずアマチュアコンテンツ全般のクオリティーが、昔に比べ上がってきている。良い作品が日の目を見ないのは不幸だ」――小学館集英社プロダクションに、こう考える男性社員がいた。

 同社は、作品のアニメ化や商品化などを手がけている。ミュージシャンや役者を目指しながらデビューできずに苦労している友人を見て、クリエイターにデビューにつながる機会を提供できればと彼は考えていた。

 「デビューするのは狭き門だとしても、“マイナーリーグ”のようなものがあった方がいいのでは」と、漫画投稿サイト「DreamTribe」を企画。今年6月、小学館と共同でオープンした。

 目的は、作品を選考の舞台にのせること。小学館のコミック誌の編集者が作品をチェックできるようにし、作風のミスマッチを防ぎつつ、優秀な人がいればスカウトして、メジャーデビューにつなげる計画だ。

海外の出版社も注目

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 DreamTribeに「作家」として登録すると、漫画やイラスト、4コマ漫画を投稿・公開し、閲覧者からコメントをもらったり、小学館の編集者に見てもらえる。

 作家は多くの読者や編集者に作品を見てもらうことができる。編集者にとっては、作品・作家をチェックする機会が増え、一般ユーザーの反応も参考にできる。

 これまでにストーリー漫画が約350作品、4コマ漫画が約320作品、イラストが約420作品投稿された。PhotoshopやComicStudioで制作されたものが多く、フルカラーの作品や、写真を取り込んだもの、3DのCGを使っているものもある。作家の約半数が20代、約3割が学生だ。

 DreamTribeからデビューした例はまだないが、小学館がデビューに向け、コンタクトを取っている作家もいる。「面白い作品が投稿されている。海外の雑誌に掲載できそうな作品もある」と、DreamTribeに注目する海外出版社もあるという。

 ユニバーサルミュージックと共同でミュージシャンのCDジャケットのイラストを募集する企画も始めた。「投稿作品をメジャーな舞台に露出させたい」という意図だ。

漫画業界は「常に新しいコンテンツを欲している」

画像 3DCGを使った漫画もある

 コミック誌は廃刊が相次ぐなど苦戦が続いている。「雑誌を盛り返すのも、新しいメディアで漫画を展開していくにしても、そのメディアに適した作品が必要。既存のものを使ってしっくりこない場合がある。常に新しいコンテンツを欲している」――積極的に新人発掘を行う背景には、こんな事情がある。

 「趣味嗜好(しこう)が多様化し、漫画やアニメなどのコンテンツ業界で、ビッグヒットが出づらくなってきているように思う。ヒット作品を小学館から出したいという思いは強い」

 今後は、DremaTribeの優秀作品を小学館の携帯電話向けサイトなどで配信することも検討している。「雑誌が減っても漫画が読まれなくなったわけではなく、漫画を掲載するメディアは広がっている。今は、雑誌に掲載した作品をPCや携帯サイトで2次利用することが多いが、今後はPCや携帯サイト用の書き下ろし作品が出てくるだろう」

 ユーザーから注文を受け、投稿された作品を書籍化する「オンデマンド出版」機能も追加する予定。漫画なら1冊1000円ほどで1部から出版でき、作家が売り上げの一部を得られるようにする。ノベルゲームを投稿できる仕組みも追加する予定だ。

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