日本オンラインドラッグ協会(JODA)やヤフー、楽天、MIAU(インターネット先進ユーザーの会)など6団体・企業は12月11日、医薬品のネット販売継続を求める要望書を、舛添要一厚生労働相に手渡した。
要望書では「通信販売で医薬品を購入するのが不可欠な消費者にとって、その手段が奪われることになり、健康維持の必要性の観点からは重大な問題がある」などと指摘。舛添厚労相は「安全性の確保と医薬品のネット販売を両立できるようにやっていきたい」と話したという。
その後の会見で、JODA理事長を務めるケンコーコムの後藤玄利社長は「医薬品のネット販売は生活者に欠かすことができないものになっている。ネット販売の規制を強化すれば、有用なインフラを奪いかねない」と訴えた。
厚労省は、来年6月に施行予定の改正薬事法で、医薬品を副作用リスクに応じて、「第1類」「第2類」「第3類」に分類。副作用リスクが比較的高い第1・2類については、薬局店頭などの対面販売に限定し、ネットや電話、カタログなどを使った通信販売を禁止する方針だ。
これに対しJODAはこれまで、安全性を確保するための自主ガイドラインを策定するなどして、ネット販売継続を訴えてきた。ヤフーや楽天も、医薬品のネット販売継続求め、署名活動を行っている(「困ります、私たち」――楽天、医薬品のネット販売継続求め署名活動)
楽天は今回、約10万人分の署名を舛添厚労相に提出。実際に署名したユーザーも同席し、ネット販売の継続を訴える手紙を手渡した。要望書にはJODA、ヤフー、楽天、MIAUのほか、医薬品ネット販売推進協議会と日本通信販売協会が名を連ねている。
医薬品のネット販売が制限されると、どのような問題が起こるのだろうか。「薬局がない離島に住んでいて、ネットで購入できないと困る」「妊娠検査薬を定期的にネットで購入している。薬局の男性店員が相手だと何となく気が重いのでネット販売を重宝している」「薬局に行く時間がない共働きの夫婦にとってネット販売は必須」――楽天には署名したユーザーからこんなコメントが寄せられている。
紫外線アレルギーのために長時間外出することが難しく、医薬品をネットで購入しているという女性もいたという。MIAUの中川譲さんは、先天的な聴力障害があるというMIAU会員のケースを紹介。「聞いたり話したりはできないが、読み書きはできるため、対面販売よりもネット販売の方が意思疎通しやすい」と話していたという。「ネットに助けられて障害を克服し、生活している人を苦しめてはいけない」と、中川さんはネット販売の必要性を訴える。
国内の医薬品市場は約6000億円で、うち1%をネットが占めるという。楽天市場には医薬品を販売する店舗が200店ほどあり、中小の薬局・薬店が多いという。医薬品のネット販売が規制されると、ネットが重要な販路となっている薬局・薬店にとっては死活問題になりかねないという。
ケンコーコムの後藤社長は「ネットで医薬品を購入する生活者とまじめに働いている薬局・薬店を見殺しにする――それが行政のやり方なのか」と、薬事法の改正を厳しく批判する。
楽天の関聡司執行役員は「通信販売では『対面の原則』を担保できないと厚生省は説明しているが、通信販売の特性を活用すれば、実店舗以上に十分な情報提供が可能だ。対面販売でないことに起因する健康被害の実例は1件も確認されていない」と話す。
ヤフーの別所直哉CCOは「ネット・対面に関わらず、医薬品を販売する際に有効な情報提供の仕組みについて今後議論するべきだ」と訴え、「医薬品の適切な情報提供に必要な手段としてのネットを考えていきたい」と話した。
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