「ニコニコ動画」で、気に入った動画や投稿した動画を、有料ポイントを使って宣伝できる機能「ニコニ広告」がこのほどスタートした。有料の「ニコニコポイント」を使い、宣伝したい動画を検索結果ページなどで目立たせることができる。
「“御三家”以外の動画を目立たせたくて」と、ニワンゴ取締役の西村博之(ひろゆき)氏は狙いを語る。御三家とは、「THE IDOLM@STER」「東方Project」と、初音ミクなどの「VOCALOID」。ニコ動のヘビーユーザーに人気で、通常のランキングではこれらが上位を独占する傾向にある。
だがこれらは、ゲームやアニメ系に興味がない一般の人が楽しめるコンテンツではない。ユーザー増に向けて「一般化」を目指しているニコ動にとって、御三家ファン以外でも楽しめる“入り口”作りが課題だった。
ニコニ広告を使えば、これまで御三家の影に隠れて目立たなかった面白動画を、検索やランキングなどで目立たせることが可能。一般の人がニコ動を楽しむ新たな入り口になるのでは、とひろゆき氏は期待する。
ニコニ広告は、有料ポイント「ニコニコポイント」を使えるニコ動唯一の機能だ。宣伝は、100ポイント(100円)から可能。指定したタグの検索結果の「ニコニ広告枠」に、宣伝したい動画を表示できる。
使われたポイントの累計額によって「宣伝レベル」が上がり、サムネイルに宣伝コメントが表示されたり、サムネイルがより目立つ色に変わったりする。宣伝されている動画やポイントランキングは、ニコニ広告専用ページも確認できる。
動画を通常のランキングとは異なる視点で紹介したい――ひろゆき氏によると、ニコニ広告の企画の背景には、そんな発想があったという。
再生数やマイリスト数を元に算出されるランキングは「この作品がものすごく好き、という人のクリックと、『フーン』と思っているだけのクリックが等価に扱われる」こともあり、質の高いコンテンツが上位に来るとは限らない。
しかも、最近は常に“御三家”が上位を独占する状態。「御三家に興味がない人には、ランキングはそもそも役に立たない」という問題は、常に課題になっていた。
特定の動画の順位をランキング上位に上げようと、複数アカウントを取ってマイリスト登録をするなどの「工作」も、たびたび問題になってきた。運営側は対策を施してきているものの「工作する人は無限の時間と無限の量を持っている」ため、対応もいたちごっこが続く。
ニコニ広告では、お金を介在させることで、ユーザーの“好き”が反映されたランキングができると期待。「無限の時間でコントロールできない」お金という指標を使えば、新たな面白動画発掘につながると、ひろゆき氏は期待している。
ニコニ広告の広告ランキングを見ると、御三家や、ニコ動で流行している内輪ネタの動画がやはり多い。「確かに御三家の動画に投資する人は多い」とひろゆき氏は認めるが、それ以外の良質なコンテンツも少しずつポイントを集め、じわじわと目立つようになるだろうと期待する。
「通常のランキングは、1人ではいくら頑張っても御三家には勝てないが、ニコニ広告のランキングは1人で変えられる。今でも突発的に『何だこれ』という動画が上がってくることもある」
ニコニ広告で御三家以外に目立つのは、「テレビや新聞などが報じない真実」とうたい、ネットのうわさなどをまとめた政治的な背景のある動画だ。「政治モノは、義憤に駆られる人がいる。“思いの総量”で言えば御三家と同じぐらいあるのだろう」
16万円分以上の広告ポイントを得ながら、権利問題で削除された動画もあった。小沢一郎民主党党首を批判する内容で、テレビ番組の映像などがそのまま使われていた。
ニコニ広告で宣伝中の動画が削除された場合、広告ポイントは返還されないため、一部ユーザーからは不満の声も挙がっていたが、「削除されるような動画は宣伝にお金かけても仕方ないよねと分かってもらい、納得してもらうしかない」。
「暇な人と感情の量が多い人がネット全体を占めているように見られがちで、問題だと思っている」――ひろゆき氏はこう話す。ネット上で大騒ぎになっているように見える話題でも、実はほんの数人が大量に発言し、炎上させているだけ――ということも少なくない。
例えば、2ちゃんねるは、萌えアニメや竹島問題などで盛りあがるが、これらは「大多数にとってはどうでもいいが、アニメ好きな人や竹島について話したがる人が熱心」なだけとみる。ブログやニコ動での炎上問題も同様だ。
「バカが騒いでいて、『こいつらみんなバカ』と思われるのは嫌じゃないですか。荒らす人や騒ぐ人は100人に1人や1000人に1人。でもその人たちが大量に批判コメントして動画を炎上させると、まるでみんな批判コメントを書いているように見える。すごく少数の人がやっているのに、メディアに取り上げられて、より多くの人が集まって、という悪循環が起きている」
ニコニ広告は、その動画を宣伝している人の数や、使ったポイントの量が「宣伝履歴」で分かるようになっている。例えば1人のユーザーが、竹島問題に関する動画に大量に広告ポイントを使い、ニコニ広告ランキング1位にした場合、宣伝履歴を見れば、実は1人が応援しているだけだったと分かる、というわけだ。
ニコニ広告で宣伝してもらっても、広告費用は動画制作者には入らず、ニワンゴに入る。作り手が得をせず、ニワンゴが得をする――こんな仕組みに違和感を訴えるユーザーもいる。
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