「携帯のIMEはどんどん進化し、使っていて楽しいのに、PCのIMEはほとんど進化していない」――新日本語入力システム(IME)「Baidu Type」(バイドゥタイプ)は、“ケータイ世代”のそんな問題意識から生まれた。
企画したのは、バイドゥのプロダクト事業部に所属する稲垣あゆみさん(27)。中学生のころからPHSを使い、高校からは携帯のヘビーユーザー。文字入力は「携帯とPCでほぼ同じか携帯の方が速いぐらい」で、ブログもTwitterも携帯から更新。美しくネイルアートを施した爪で高速入力する“イマドキの女子”だ。
稲垣さんはPCのIMEに物足りなさを感じてきたという。携帯は自分の入力した内容をどんどん学習し、思い通りに予測変換してくれるし、絵文字やデコメも充実していて「楽しい」。だがPCはただ正確に変換するだけで味気ない、と。
企画がスタートしたのは今年の初めごろ。検索と親和性のある新サービスを考えていた際に出たIME開発のアイデアと、稲垣さんのIMEへの問題意識が結びついた。検索事業者が提供する無料のIMEは前代未聞で、「ブルーオーシャン(未開拓の市場)なんじゃないかと盛り上がっていた」。
夏に開発をスタート。中国本社の開発陣を含む20代ばかり十数人のメンバーを集めた。稲垣さんも中国と行き来しながら取り組み、半年足らずで完成させた。開発チームは同年代ばかり。「楽しいし、中国の技術者のレベルはすごく高い」
Baidu Typeは、一般的な辞書やWebページからの情報を元に統計的言語モデルを構築。人名など固有名詞や流行語、口語に強く、ネットで話題の芸能人の名前なども一発変換できる。「にこ」で「('∀`)」「(・∀・)」と変換するなど顔文字にも対応した。
入力中の文字はすべて、変換ウィンドウ内に表示。変換候補はその下に横に並んで表示され、1文字入れるにつれて候補もどんどん変わっていく。携帯IMEの予測変換に似たスタイルで、「入力しながら候補が変わっていくのは楽しい」と考えて取り入れた。
PC用IMEでは通常、変換候補が縦に並ぶ。横に並べるBaidu TypeのUIは、PCのIMEに慣れた人には違和感があり社内でも賛否両論あったという。だがせっかくIMEを作るならこれまでにないUIを提案したいと横表示を採用した。「大学生など若い人に使ってもらうと意外と『いいじゃん』と言ってくれる」。携帯を使い慣れている層には特にフィットするスタイルのようだ。
変換のキー操作を減らせる「アドバンストモード」を装備した。通常のIMEだと、(1)変換(スペースキー)、(2)候補にカーソルを合わせる(スペースキーか数字キー)、(3)選択(Enterキー)という3ステップ必要な変換作業が、Baidu Typeのアドバンストモードなら1回のキー操作でOK。慣れると高速タイピングできる。
「home」など英単語を入力した際「ほめ」「褒め」といった平仮名・漢字だけでなくアルファベットの「home」も変換候補に出す機能も備えた。アルファベット変換は稲垣さんおすすめの「プチ機能」だ。
言語バーや変換候補表示画面の色を変えられる「スキン」機能が特徴的だ。ピンクや水色、オレンジなど6色から選べる。今後、サンタをあしらったクリスマスバージョンなど新スキンを増やし、“着せ替えが楽しいIME”として提案していく。
スキンが変えられるIMEは珍しいが、ケータイヘビーユーザーの稲垣さんにとっては自然な発想だったようだ。「携帯電話だと、壁紙やメニュー画面、アンテナ表示など丸ごと自分好みに変えられるパッケージもある(auのナカチェンなど)。これまでPCのIMEを意識したことがなかった一般の人に、新しいIMEに興味を持ってもらうためにも、スキンのカスタマイズ機能は必須」。
「IME」だとPCに詳しくない一般の人には分かりにくいと思い、タイピングの「Type」という名を選んだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR