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Ustreamで輝くニューヒロイン 「19時女子プロレス」は熱く懐かしく(2/2 ページ)

» 2010年08月11日 16時32分 公開
[宮本真希,ITmedia]
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「プロレスやってない方が稼げる」が……

画像 佐藤社長

 佐藤社長は、ソフトバンクが米Ustreamに出資したニュースをきっかけに、Ustに注目。歌手の広瀬香美さんのUst番組で途中音声が出なかったりしていたのを見て、「(映像や音声が)止まっても大丈夫だから、気軽にやってみよう」と、19時女子プロレスの構想を思いついた。アイスリボンのプロモーションになればと思っていたという。

 背景には、女子プロレスをめぐる状況の厳しさがある。ジャガー横田選手らを輩出した「全日本女子プロレス」や、長与千種選手が中心となって設立した「GAEA JAPAN」といった有名団体が2005年に解散。テレビで試合が流れることや、地方巡業をするほど資金力のある団体も少なくなったため、試合数が減り、気軽に女子プロレスを見られる環境は減っているという。

 そんな中スタートした19時女子プロレスの狙いは、試合数を増やし、地方にも女子プロレスを広げること。試合数を増やせば、選手は経験を積んで技を磨くことができ、Ustreamを使えば、どこにいても試合を気軽に観戦できる。女子プロレス全体の盛り上がりにもつながると、佐藤社長は考えた。

 アイスリボンのリングがある埼玉県蕨市(わらびし)まで平日に試合を見に来られる人は少ないが、午後7時にUstで19時女子プロレスを見る習慣ができれば、そのうち実際にアイスリボンの試合を見にきてくれるのではないかと、佐藤社長は期待を寄せる。

画像 笑顔がかわいい帯広選手

 ネオプラスは収益の7割を同社の着メロサイトから得ている。DVDやTシャツなどの関連グッズ、チケットの販売など、アイスリボンからの収益もあるが、運営コストを考えると「プロレスやってない方が稼げる」(佐藤社長)状態。だが「オンリーワンのコンテンツを持っているのは強いと思う」と、プロレスから離れるつもりはない。

 アイスリボンの試合をYouTube配信することを考えたこともあるが、DVD販売のビジネスと食い合うため、踏み出せなかったという。Ustは動画共有サイトとは違い、アーカイブを残さないライブ配信ができるため、活用を決断できた。

 帯広選手が19時女子プロレス所属となったのは、新人に経験を積んでもらおう――という意図から。Ustのおかげで「帯広選手はデビューして2カ月なのに顔を覚えてもらえている。彼女のやる気が19時女子プロレスをひっぱっている」と、佐藤社長はうれしそうに話す。

「異端扱い」からの飛躍

画像 アイスリボンのページ

 アイスリボンはさくら選手が06年に旗揚げした。元ひきこもりの真琴選手、身長142センチと小柄な都宮ちい選手、グラビアアイドルでもある安藤あいか選手と個性豊かなメンバーがそろっている。10歳のくるみ選手や、13歳のりほ選手のように“超若手”もいる。

 プロレス関連のWebサイトを制作していた佐藤社長はさくら選手に出会い、運営を手伝うようになった。当時は「女子プロレスが崩壊している時代」(佐藤社長)。だが、女子プロレスの全盛期と比べることはしなかった。なにせ若手が多く「昔を知らないレスラーばかり」だ。

 「気軽に見てほしい」という思いから、持ち運び可能なマットを使い、どこでも試合ができるようにしていた。「プロレスを外に響かせよう」と、選手が出演する映画を作って公開したり、アイスリボンを特集するテレビ番組を制作してテレビ埼玉で放送したり、mixiのコミュニティでユーザーと交流したり……試行錯誤を重ねるうちにファンは増えた。

 昨年は東京スポーツ新聞社主催の「プロレス大賞」で、5年間該当者なしだった「女子プロレス大賞」に、さくら選手が選ばれた。さくら選手はアイスリボンのパンフレットで「その時できる限界をきちんと越えて、それを積み重ねてきたというだけ」とコメント。多彩な選手がそろうアイスリボンは、当初「異端扱い」(佐藤社長)されることが多かったが、徐々に存在感が高まっている。

画像 アイスリボンのパンフレット

 「一貫してやりたいことは変わっていない。『女子プロレス、私にもできる!』と思ってほしい」――そんなふうにもコメントするさくら選手。女子プロレスを身近に感じてもらうため、アイスリボンと並び、19時女子プロレスにかける思いも熱い。後輩の帯広選手には「すべてを吸収してほしい。苦しく、楽しく(頑張ってほしい)」とエールを送る。

 19時女子プロレスとアイスリボンを別団体としたことで、「いろんな可能性がみえてきた」と佐藤社長。夢は、19時女子プロレスをアイスリボンと並ぶ規模の団体に育てることだ。1軍と2軍という位置付けではなく「セ・リーグとパ・リーグのような感じにしたい」と思っている。Ust映像中に広告を映すなど、19時女子プロレスの取り組みから収益も得ていきたい考えだ。

 「与えてもらったものを還元したい」と帯広選手は話す。Ustの同時視聴者数が1000人に届かず、さくら選手が悔し泣きしていたとき、帯広選手はもらい泣きしそうになるのをこらえていた。「女子プロレスを見られない人にUstで届けたい」――ニューヒロインは先輩の思いを引き継ぎ、羽ばたきはじめた。

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