昨年ごろから、ある若い登山家がネット上で存在感を増している。栗城史多(くりき のぶかず)、28歳。世界最高峰エベレスト(8848メートル)の登頂を目指しながら、登山中ビデオカメラで自らを撮影し、その様子をUstreamやTwitterで実況中継するスタイルが話題を呼んでいる。
ただ登るだけではない。エベレストで流しそうめんにチャレンジしたり、カラオケを歌ったり、“世界一上から目線”の人生相談をしたり。ユニークな試みが注目を浴びた。
なぜそのようなことを思いついたのか、どんな機材を使っているのか。栗城さんに聞いた。
――エベレストのベースキャンプで流しそうめんとかやっていたじゃないですか、あれはどういうきっかけなんですか?
流しそうめんはかなり計画的にやりました。竹を持って行き、きちんと測量して流れるように計算して。寒いところでもちゃんと流れるのかなって心配でしたから。
あとは、極地というのは悲壮感があって、とてもつらそうな印象があるじゃないですか。僕はそれが好きじゃなくて、人が見てて楽しそうなことをやろうと思っていまして、それで流しそうめんとかカラオケをやろうと思ったんです。
――山頂から中継をする機材について教えてください。
ベースキャンプからは衛星回線を使っていて、イギリスを中継してインターネットに接続しています。ベースキャンプに一度Wi-Fiの中継局を設置して、僕の電波をそこで受けるようにしています。
登山中の生中継にはF1のオンボード中継に使われるような強力な電波を発する機械を持って上がっています。名前はCCR(Cold China Red)と名付けていて、実は冷やし中華を食べていたときに思いついた名前で、略称にするとそれっぽいよねと。
電波はかなり強力で日本国内では使えないです。人体に影響があるんじゃないかってぐらいの強さで、しかも、中継局では超指向性の強いアンテナを常に僕に向けていなければならないのです。
電池もまた強力で、軍事用のリチウム電池を使っています。水に濡らすと結露の関係か、爆発してしまうんですよ。これをビニールで何重にも巻いて持って上がっています。
――まさに、爆弾を背負って上っているようなものですよね。単独で上るときは精神的にもかなり負担になると思うのですが、普段、メンタルのトレーニングとかしているんですか?
特に鍛えていることはないですね。マッサージ行きたいとか、酸素カプセルに入りたいとか、癒しを求めますね。
――TwitterやUstreamはどのあたりに魅力を感じますか?
Twitterの場合は、たくさんいろんな質問など、最近は悩み相談になってきてるんですが、すぐに回答できるところですよね。ブログはあくまでも一方的なコミュニケーションになりがちですから、双方向でコミュニケーションできるのがいいと思います。
Ustreamは「ようやく来たか!」という感じですね。以前からYahoo!などで中継をしていたので(編注:Ustream登場以前から栗城さんは、Yahoo!JAPANの特設サイトで登山の映像をライブ配信していた)。システム的にはUstreamでなくてもできるわけですが、生中継で何かを共有できるということ自体の認知度が高まってきているのがいいですよね。Ustreamを開くとなにかいつもやってるじゃないですか。そこで、エベレストの山頂中継とかやっていて「なにこれ!」と開いた人が感動してくれて、人生が変わったりするとすてきだなって思いますね。
――日本にいる間はUstreamしないですよね。
そうですね。全くやらないですね。意外にも私生活が地味なので(笑)。道に迷ってたりとかしてますし。
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