――普段トレーニングはどんなところで?
前は低酸素室とかに入っていましたが、高山というのは、低酸素というよりは気圧が低いんですよ。気圧が低くなると、脳の水が外に出ようとして、判断力が鈍ったりするんです。低酸素室では酸素を薄くすることはできるんですが、気圧を下げることはできないんです。だからあまりトレーニングにならないんですよね。実際に山に登って気圧が低い環境に慣れる方がよっぽどトレーニングになると思っています。
すごいトレーニングをして筋肉をつけてしまうと、筋肉はすごい酸素を消費するので、高山では逆に重りになってしまうんです。ですので、筋肉は必要最小限あればいいと思っています。
じつは重要なのは、寒さにどれぐらい強いとか、テント生活をどれぐらい我慢できるかとか、汚い水でも平気で飲めるとか、そういうメンタルなところなのです。逆境に弱いと、過酷な遠征には向かないと思いますね。
――栗城さんは高山病になりやすいですか?
僕は高山病になりやすいタイプですね。3500メートルぐらいになると、昔からぜんそく持ちなので肺が痛くなります。あまり高山に強いとはいえないですね。
たとえば、2500メートルとかで高山病になり始める人でも、順応してしまえば結構上までいける人もいますし、4000メートル超えても高山病にならなくて、5000メートルでいきなり重症になる人もいます。経験的には、お酒を飲んですぐに顔が赤くなる人は、間違いなく高山病になりやすい体質ですね。僕はそんなことはないです。
――結構ハイペースで登山に出られてますね。
そうですね、だいたい春と秋は山に入っています。いい季節に日本にいないんです。
――日本で行ってみたい山ってありますか。
北海道では訓練で冬山に登ることはありますが、プライベートではなかなか時間がないですね。行きたいですけれど。国内は本当に行ったことがない山が多いので、ぜひいつか行ってみたいと思っています。
――この先のチャレンジについて聞かせてください。(編注:栗城氏は昨年、今年の9月と2度、エベレスト登頂に挑戦したが、失敗している)
いろいろと考えています。憶測もたくさんありますよね。でも企業秘密です(笑)。
ただ1ついえることは、もし登ることができれば、エベレストより高い山ってないですよね。ということは、エベレストに登れれば、ほかの山に登れる可能性も高くなるわけです。もちろん、ルートとかたくさんあるわけですが、いろいろなところから中継できるわけです。
自分がこれ以上ないなって思えばやめるかもしれないですが、行きたい山はまだたくさんあります。
初めてお会いした栗城氏は非常にやさしい雰囲気で、Ustreamなどでみる極限状態とのギャップが新鮮だった。彼のTwitterによると、下界にくるとテンションが下がってしまうらしいのだが、来年、みたびエベレストへチャレンジするということなので、元気な彼の姿が見られることに期待したい。
別れ際に握手をしたとき、筆者がこれまで出会ってきたクライマーのがっしりとした手とは違う、ふわっとした優しい感触に「なるほど、これが新しいクライマーの手か」と直感した。
現在は、全国で講演活動などをしながら、次の登山に向けての準備を進めているようだ。Twitterでも随時つぶやいているので、フォローしておけば、次のチャレンジも共有できるだろう。
株式会社hatte代表取締役、お気楽山岳ポータルYAMAAN!代表。ラブプラス片手に八ヶ岳に登ったり、富士山頂からUstreamしたり、山頂を踏まずベースキャンプでだらだら過ごしたりと、山とその周辺で楽しく遊ぶことを研究、実践している。
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