ITmedia NEWS >

「極地で楽しそうなことを」 “エベレストからUstream”の登山家・栗城史多さんに聞く(2/2 ページ)

» 2010年11月19日 07時00分 公開
[岡本紳吾YAMAAN!]
前のページへ 1|2       

トレーニングは? 高山病は?

――普段トレーニングはどんなところで?

画像

 前は低酸素室とかに入っていましたが、高山というのは、低酸素というよりは気圧が低いんですよ。気圧が低くなると、脳の水が外に出ようとして、判断力が鈍ったりするんです。低酸素室では酸素を薄くすることはできるんですが、気圧を下げることはできないんです。だからあまりトレーニングにならないんですよね。実際に山に登って気圧が低い環境に慣れる方がよっぽどトレーニングになると思っています。

 すごいトレーニングをして筋肉をつけてしまうと、筋肉はすごい酸素を消費するので、高山では逆に重りになってしまうんです。ですので、筋肉は必要最小限あればいいと思っています。

 じつは重要なのは、寒さにどれぐらい強いとか、テント生活をどれぐらい我慢できるかとか、汚い水でも平気で飲めるとか、そういうメンタルなところなのです。逆境に弱いと、過酷な遠征には向かないと思いますね。

――栗城さんは高山病になりやすいですか?

 僕は高山病になりやすいタイプですね。3500メートルぐらいになると、昔からぜんそく持ちなので肺が痛くなります。あまり高山に強いとはいえないですね。

 たとえば、2500メートルとかで高山病になり始める人でも、順応してしまえば結構上までいける人もいますし、4000メートル超えても高山病にならなくて、5000メートルでいきなり重症になる人もいます。経験的には、お酒を飲んですぐに顔が赤くなる人は、間違いなく高山病になりやすい体質ですね。僕はそんなことはないです。

――結構ハイペースで登山に出られてますね。

 そうですね、だいたい春と秋は山に入っています。いい季節に日本にいないんです。

――日本で行ってみたい山ってありますか。

 北海道では訓練で冬山に登ることはありますが、プライベートではなかなか時間がないですね。行きたいですけれど。国内は本当に行ったことがない山が多いので、ぜひいつか行ってみたいと思っています。

次のチャレンジは

――この先のチャレンジについて聞かせてください。(編注:栗城氏は昨年、今年の9月と2度、エベレスト登頂に挑戦したが、失敗している)

 いろいろと考えています。憶測もたくさんありますよね。でも企業秘密です(笑)。

 ただ1ついえることは、もし登ることができれば、エベレストより高い山ってないですよね。ということは、エベレストに登れれば、ほかの山に登れる可能性も高くなるわけです。もちろん、ルートとかたくさんあるわけですが、いろいろなところから中継できるわけです。

 自分がこれ以上ないなって思えばやめるかもしれないですが、行きたい山はまだたくさんあります。


画像

 初めてお会いした栗城氏は非常にやさしい雰囲気で、Ustreamなどでみる極限状態とのギャップが新鮮だった。彼のTwitterによると、下界にくるとテンションが下がってしまうらしいのだが、来年、みたびエベレストへチャレンジするということなので、元気な彼の姿が見られることに期待したい。

 別れ際に握手をしたとき、筆者がこれまで出会ってきたクライマーのがっしりとした手とは違う、ふわっとした優しい感触に「なるほど、これが新しいクライマーの手か」と直感した。

 現在は、全国で講演活動などをしながら、次の登山に向けての準備を進めているようだ。Twitterでも随時つぶやいているので、フォローしておけば、次のチャレンジも共有できるだろう。

岡本紳吾

画像

株式会社hatte代表取締役、お気楽山岳ポータルYAMAAN!代表。ラブプラス片手に八ヶ岳に登ったり、富士山頂からUstreamしたり、山頂を踏まずベースキャンプでだらだら過ごしたりと、山とその周辺で楽しく遊ぶことを研究、実践している。


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.