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» 2013年03月08日 11時00分 公開

部屋とディスプレイとわたし:“ユニクロ化”するクリエイター  (2/3)

[堀田純司,ITmedia]

出版の世界にも現れている「販売の時代」

 製造から、販売へ。メーカーから小売りの時代へ。こうした変化が出版分野にどう表れているかというと、ものの見事にきっちり反映されていると感じます。

 たとえばこの分野では「手描きPOP」に注目が集まり、ブームとなりました。それに各店舗のカリスマ書店員さんが話題を集めたこともありました。これらは情報があふれる現代において「売る力」を持つ人に、注目が集まった出来事です。

 中でももっとも象徴的なのが“全国書店員が選んだいちばん! 売りたい本”を選ぶ「本屋大賞」の登場。2004年からはじまったこの賞が、ある意味トラッドな文学賞以上に注目を集めている状況ほど、「出版における小売りの時代」を表現する“事件”はありません。

 現場レベルの変化でいうと、以前よりはるかに編集者や著者が書店さんの現場を回り本を置いてくれるよう営業する「書店営業」が重視され、また書店さん向けの試し読み小冊子や、ペーパーなども企画されるようになりました。こうした試みも、ただ作っているだけではダメで、小売りの現場を重視するという、現代の流れだと思います。

 こうした潮流にともない、大きな販売網を持つ大型チェーンの発言力も高まり、時に小売りによるメーカーへの値引き圧力も、報じられるようになりました。

 ただ、販売力を獲得、維持するためには、多数の店舗網を持つだけでは足りない。ユーザーの一番近くにいるという長所を活かし、細かいニーズをつかんでいくことが大切です。現代では、ユーザーニーズのそばにいる小売がメーカーと共同して商品企画を行い、しかもそれがヒットするという事例が普通に見られるようになりました。

 「製造」と「販売」が分かれているのではなく、ユーザーの一番近くにいる小売が、商品を企画する。このあり方をもっとも徹底しているのが ユニクロです。

 彼らの業態は自分たちで商品を企画し、生産、そして販売まで一貫して手がけるSPA(製造小売り)です。製造業ではありますが、Appleも直営店を重視するという、製造小売り的な面を持っていますね。

 ユーザーニーズに直接向かい合っている小売りが、商品を企画し、生産管理まで一貫して手がける。その強さが、現代では評価されている。大手小売り業がPBに力を入れるのも、価格競争力だけではなく、その力にも目を向けているはず。「小売りがユニクロ化している」のだと感じます。

 実際、イオンのPB、トップバリュにはメーカー名の表示がありません。これはイオンがたんなる販売者である立場を越えて、「PB商品の品質にイオンが全責任を持つ」という姿勢の現れなのだそうです(東洋経済2012年12月22日号)。

 最近、大量生産型の製造業には出てこない発想で、細かいニーズを掘り起こし、それを大きな販売につなげる「メイカーズ」の概念が提唱されていますが、このメイカーズもまた、ユーザーニーズからのアイディアで企画と製造を手がけるという、現代らしい潮流だと感じます。

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