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人工のクモの糸が鋼鉄より強い“世界一タフな繊維”に 新素材、実用化目前SFC Open Research Forum 2013

» 2013年11月22日 17時50分 公開
[山崎春奈,ITmedia]
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 人工クモ糸繊維を利用した新素材の開発研究を行うバイオベンチャー企業・スパイバー(山形県鶴岡市)は、人工的に合成したクモの糸を使った最新素材によるドレスを、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の研究発表イベント「SFC Open Research Forum 2013」(11月22〜23日、東京ミッドタウン)で展示している。

 鋼鉄を上回る強度とナイロンを上回る伸縮性を持つ“世界一タフな繊維”という新素材繊維「QMONOS」の開発に挑んでいる。微生物にクモ糸の成分であるタンパク質をつくらせ、ポリマーを化学繊維のように糸にして用いる。紡糸技術をゼロから自社開発し、天然クモ糸に匹敵する強度を持つ素材の生成に成功。生産性を高め、技術的に従来困難と言われてきた量産化を視野に入れる。

 展示された青いドレスは繊維を後から染めたものではなく、分子レベルで色素を混合した人工的なタンパク質素材を用いて作られている。クモの糸を使った素材として、世界で初めての工業製品形態のプロトタイプという。QMONOSは加工によって繊維以外にもフィルムやゲル、ナノファイバーとしての利用も可能なため、車や人工血管など工業製品への活用も見込む。

 実用化に向け、現在は試作研究の段階。2015年にはパイロット工場が稼働し、初年度年産10トン規模で生産を開始予定という。“夢の繊維”の本格的な量産化は目前だ。

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