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過疎化・高齢化にITの力で立ち向かう 徳島発・地域活性化ベンチャー「あわえ」(2/2 ページ)

» 2014年01月29日 17時18分 公開
[山崎春奈,ITmedia]
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photo 地元の漁師手作りの「わいの干物」

 地域に「カネ」をもたらす事業として、地域産品のブランディングにも着手。海と山に囲まれた美波町の産品は少量多品目で大規模流通に向かないため、SNSを中心にネットでの口コミを狙った商品を開発する。「地元の人には当たり前のものでも、外から来た人には珍しいもの、面白いものがいくつもある」(吉田社長)と、地元漁師が手作りして自宅で食べていた干物や、地元産の材料で作った野菜ジェラートなどを商品として展開。実際に来訪した人がSNSで共有したり、お土産にすることで実際に来訪してくれる“地域ファン”を広げたいと目論む。

 徳島県は光ファイバーの普及率が88.9%と全国第1位。インフラ面が確保され気候も温暖なため、県内には特にIT企業の誘致に積極的に取り組む自治体が複数ある。美波町には、12年5月の「美波Lab」開設を皮切りに、現在までに6社が進出。吉田社長のもとに視察の問い合わせも寄せられている。同社の事業の1つとして、空き家や空き施設のリノベーション、移住支援も含め、サテライトオフィスの誘致や起業促進を進めていく予定だ。

photo 吉田基晴社長

 吉田社長は、地方を拠点にすることは採用の面でもメリットがあると話す。「東京は競争が激しく、僕らみたいな小さな会社にとっては人材確保は悩みの種。美波町オフィスは海も近く半農生活もしやすい場所。日本に住む1億人の中に、『サーフィンが大好きで毎朝海に出られる環境で働きたい優秀なエンジニア』が1人くらいはいるだろう、その人にとってはこれ以上ない魅力になるはず、と考えた。……実際、サーファーの社員が入社しています」(吉田社長)

 「地域活性、と一口に言うが、簡単にいくとはもちろん思っていない」――徳島の小さな町を拠点にする同社の「あわえ」という社名は、その地方の方言で「路地」という意味だ。行政や地域住民と“井戸端会議”のようにコミュニケーションを取りながら、過疎化・高齢化が進む日本全国の地方都市や、今後同じような問題に直面するであろう世界各国にも輸出できるノウハウや成功事例を積み重ねていきたいとしている。

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