「.tokyo」「.nagoya」「.みんな」――WebサイトURLの末尾に付く一般トップレベルドメイン(gTLD)の種類がここ最近、爆発的に増加している。これまでドメインは「.com」「.jp」など22種類に限定されていたが、2012年に管理団体ICANNがルールを緩和。昨年末ごろから世界中で続々と新ドメインが誕生している。
gTLDの自由化でシンプルなURLを取得しやすくなる反面、大企業による“ネットの私物化”などを懸念する声も。例えば、2012年には米Googleと米Microsoftがいずれも自社製品のPRにつながるgTLD「.docs」を申請している(.docsの申請はその後Microsoftが合格した)。
新ドメインが急増する中、インターネット環境はどのように変わっていくのか。このほど来日したICANNのファディ・シェハデCEOに聞いた。
――現在、日本でも次々と新しいgTLDが発表され、運用も始まっている。gTLDの自由化によってインターネット環境はどう変わるか。
シェハデCEO この変化でインターネットユーザーが混乱するという意見もあるかもしれないが、私はgTLD空間の拡大は“いい変化”だと思っている。これはインターネットの世界に多様性や選択の機会を与えることになるので、市場競争を促進し、利益をもたらすはずだ。
また、一部ユーザーからは「DNSなんかなくてもサーチエンジンがあれば十分」という意見もあるかもしれないが、「人々はもっと自分の独自ドメインがほしいと思っている」という調査データもある。ユーザーがネット上で自分の個性を表現したり、コンテンツを配信したりする中で、ドメインは今後も重要であり続けるはずだ。したがって、gTLDの自由化はいいことであり、人々の害にはならないと考えている。
自由化を受けて日本では「.tokyo」の運用が始まったし、フランス・パリでは「.paris」の運用プランもあるようだ。gLTD空間の拡大を通じ、都市やコミュニティー、企業などが次々と新たなイノベーションのチャンスをDNSに見出すだろう。
――gTLDは今後どれほどまで多様化するのか。
シェハデCEO ICANNがこれまでに申請を受理した新gTLDは2000件ほどで、現在これらの申請を処理している。その中でいくつかは不合格になるものもあるし、複数の申請者が同じ名称に対して競合している例もあるため、最終的な数としては1300種類ほどに落ち着くと見込んでいる。
これまでgTLDは22種類しかなかったので、これは非常に大きな拡張だ。また、中国語、日本語、アラビア文字、キリル文字、ギリシャ文字など、ラテン文字ではない新gTLDも続々と生まれている。今後こうしたラテン文字以外の新gTLDは数百種類まで増えるだろう。
――gTLDの規制緩和を受け、大企業などによるネットの“私物化”が進むのではという懸念もある。
シェハデCEO まず前提として、Microsoft、Google、ソニー、東芝などさまざまなブランド企業が新gTLDを申請しているが、各社ともドメイン名に関して革新的なアイデアを持っている。
一部のブランドでは、顧客1人1人に対して独自ドメインを付与する考えを持っているところもある。例えば「(顧客の名前).sony」といったWebサイトを個別に用意し、顧客が好きなものとそのブランドの商品を組み合わせて紹介できるようにするといった具合だ。アジアだけでも数百のブランドが次の新gTLDの募集に参加したいと表明しており、gTLDの自由化に対する市場の期待はとても大きいと感じている。
こうした中で、例えばMicrosoftが「.microsoft」をどう使うか、パリが「.paris」をどう使うかなどは各管理者が決めればよいことだ。われわれの役割は、企業や組織が革新的な取り組みを行えるように市場を開いていくこと。ICANNはあくまで非営利団体であり、人々が市場でイノベイティブなことをするための手助けを目指している。
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