「ただ今、当機は北京国際空港に到着しました」
ある日の正午過ぎ、飛行機が空港に着陸するや否や、堰を切ったかのように機内で一斉に同じ着信音が鳴り響く。隣の席に座る女性の手元をのぞくと「機内モード」の解除から最初にタップしたのはペンギンのイラストが描かれたアプリ。メッセージ画面を開くと、「ようやく着いた。早く家に帰りたいわ」と文字を打ち、送信する。
彼らが使っているのは、中国のインターネットサービス大手、Tencent(腾讯)が提供するインスタントメッセージングツール「Tencent QQ」および「WeChat(微信)」だ。
日本ではあまり馴染みのない同社だが、中国のハイテク関連では、ECサービスのAlibaba(阿里巴巴)、検索エンジンサービスの百度(Baidu)と並びトップを走る企業だ。中国ではこのビッグスリーの頭文字を取って「BAT」などと称される。
Tencentの主力となるサービスは、上述したQQとWeChat。QQは月間のアクティブアカウント数が8億4800万人で、同時オンラインユーザー数は2億人を超えている。一方のWeChatも新興のサービスながら、アクティブアカウント数は月間で3億9600万人となっている。なお、WeChatは、日本発の無料通話・無料メールアプリ「LINE」と競合する形で、アジア地域を中心とする市場シェア拡大でしのぎを削っている。
そのほか、PCおよびモバイル向けゲーム「QQ Game」や、ソーシャルネットワーキングサービス「Qzone」、国内の主要銀行と提携し、現在までに2億アカウントを所有するモバイル決済サービス「財付通」(同様のサービスにAlibabaの「アリペイ」がある)など、提供するサービスは多岐にわたる。
Tencentの株式時価総額は約1200億ドル(約12兆3152億円)を超え、百度(約554億ドル)の倍以上の差をつける(Alibabaは今年8月に米国で上場予定)。日本企業と比較すると、トヨタ自動車(約20兆2811億円)とソフトバンク(約9兆2991億円)の間に位置する企業規模である。
2013年通期の売上高は604億3700万元(約9669億9200万円)、純利益は155億6300万元(約2490億800万円)に上る。この10年間で売り上げは約82倍と大きく伸ばしている。
このように急成長を続けるTencent。その要因に迫るべく、中国・広東省深センにある本社を取材した。
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