3誌の作品を扱う「モアイ」は、200作品以上の第1話無料公開やWeb限定コミックなど充実したコンテンツが特徴のサイトだ。コーポレートサイトの延長ではない、「まず漫画を読んでもらう」入り口と位置付けている。
工夫の1つが、Web媒体ならではの「縦スクロール、画像ベタ貼り」の配置。無料で広く読んでもらう試し読みだからこそ、横開きの誌面に合わせるのではなく、多くのWebコミックの作法に合わせ、URLにアクセスするとそのまま読み始められる形に決めた。「コンプレックス・エイジ」も、専用ビューアの起動や会員登録の必要があったらここまで話題にならなかったかもしれない――と、同サイトを統括する副編集長の三村泰之さんは分析する。
オリジナルコンテンツの充実にも力を入れているとはいえ、「あくまで最終目標は本誌と単行本の認知向上です。宣伝やプロモーション用のショールーム」と三村副編集長は言い切る。“バズらせよう”と力を入れているわけではなく、「やらないよりやった方がいい、出し惜しみせず可能性があるものは何でもやる」という姿勢だ。
広く情報公開をするサイトで、特定の作品にアクセスが集中したのは異例の事態。三村さんは「新人の作品にこれだけ光が当たるのは予想外でうれしいが、作品としてはまだスタートに立ったばかりで実際に評価を下すのはこれから。共感の声も多いが、選評会でも賛否両論のテーマだった。ネットの声は売り上げにつながるのか」と冷静に捉える。
「ネットの評判はどれくらい重視するべきなのか」――口コミ数と販売額は伴わないことも多く、モーニングに限らず、コンテンツ制作者が試行錯誤している部分だ。
「コンプレックス・エイジ」は連載が始まってからもSNS上での読者の反応は多いが、佐久間さん自身は「そもそも“バズる”の意味を正確に知らなかったほどのアナログ人間。特別狙って描いたわけではありません」という。ゴスロリやコスプレを選んだ理由は「絵で描きたいから、というのが1番大きい」と話す。
Webサイトや同人誌で個人で作品を発表できる時代、編集部としても才能を探しに出て行く必要性は常に感じているという。「週刊よりも頻度が低く、やんちゃな作品を受け入れられる」(三村副編集長)という月刊誌「モーニング・ツー」では人気Webコミックの作者を連載陣に加えたり、同人誌即売会「コミティア」でその場で持ち込みを受け付ける「即日新人賞」も開催するなど、積極的に取り組んでいる。
「単に読者に人気があるからというだけで起用するのでなく、持っている才能をさらに伸ばしていくのがプロの編集者の意義。作者自身に『こっちに一歩踏み出してよかった』と思ってもらわなくては」(三村副編集長)
「コンプレックス・エイジ」の今後について佐久間さんは「いただいた感想の中で『心がえぐられる』というものが印象的でした。人間の触れられたくない部分、普段は表に出ない感情にこそドラマがあると思います。これからも人の弱い部分にフォーカスして、人間臭いキャラクターを描いていきたい」と話している。
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