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見えるレベルの大きさの物体をテレポートする方法、NIIなど開発

» 2014年06月30日 15時58分 公開
[ITmedia]

 目に見えるレベルの大きさの物体をテレポートする新たな方法を開発したと、国立情報学研究所とロシア科学アカデミーの研究チームが6月30日発表した。新たな「もつれ状態」を見つけることで、数千以上という原子のテレポーテーションが可能なことを証明したという。

 テレポーテーションは「ある物体(正確には物体の量子状態)を、情報を送信せず、1つの場所から別の場所に送る方法」。既に原子のテレポートには成功しているが、量子力学は微少な世界を司り、大きな物体では量子現象が観測しづらいため、人間など大型の物体のテレポーテーションはほぼ不可能だと考えられている。

 テレポーテーションでは「量子もつれ」という量子力学的現象を利用し、離れた場所に量子状態を転送する。だが大きな物体の「もつれ」はできた瞬間に消えるため、テレポートは不可能だと考えられてきた。

 研究チームは新たに「ボース・アインシュタイン凝縮体」という物質状態を利用し、大きな物体の新たな「もつれ」を見つけることでこれを克服。何千以上という原子のテレポーテーションが可能であることが証明されたという。

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photo 新手法の説明=ニュースリリースより

 テレポーテーションといえば「スタートレック」の転送装置などSFではおなじみの技術。新技術では「人間のような物体に対しては量子状態がはるかに複雑であり、同じ方法を適用することはまだ困難」というが、「さらなる研究により、この手法を使ってより複雑な状態がテレポート可能になると期待できる」という。

 また単一原子や光子ではなく、巨視的物体を使った量子プロセッサの開発に使える可能性があり、量子コンピュータの実現に道を開くとしている。

 成果は「New Journal of Physics」に掲載される予定。

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