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ボカロP、絵師、小説家――“ネットクリエイター”支援へ新団体「JNCA」 「ブームからカルチャーへ」(2/3 ページ)

» 2014年09月12日 12時50分 公開
[山崎春奈,ITmedia]

ブームからカルチャーへ

photo 10代に絶大な人気を誇る“ボカロ小説”の代表的シリーズ「カゲロウプロジェクト」は、関連動画再生数2500万回、関連書籍売上550万部を突破

 クリプトンの伊藤社長は「初音ミク発売から7年経ち、もはやボーカロイドはブームではなくカルチャーの域に育っている。今後文化として定着し、さらに世界に存在感を高めていくためには、このカルチャーに参加するクリエイターの立場を世の中に対してより明確にしていくことが必要」と、同協会に理事として参加する意義を話す。

 出版の世界でも、楽曲の世界観を描く「ボーカロイド小説」、小説投稿サイト「小説家になろう」発の「なろう小説」など、ネットで生まれた作品がジャンルとして確立されてきている。伊藤社長もボカロ小説には注目しているそうで、「当初は『歌詞が聞き取りづらい』という理由で付けられた字幕がいつのまにかそれ自体が表現に、そしてノベルになっていった。ネットならではの創作の広がり」と見る。

 KADOKAWAの井上専務は「無料で見られる、読めるものをわざわざお金を出して買うのか――数年前によく聞かれた疑問を全く覆す市場が今できている。むしろネットから生まれたコンテンツは、すでに作品や作家にファンがいるからこそ、口コミもされやすく、さらなる人気につながりやすい」と期待をかける。

世の中に求められているコンテンツ

photo ニコニコ動画内にはボーカロイド関連の「二次創作ランキング」も

 ボカロ楽曲を例に取ると、作詞・作曲する人、イラストを描く人、動画を作る人、作品から広がる「歌ってみた」「描いてみた」など、ネット上の創作物は「n次創作」が前提なのも特長だ。携わる人が多い上、たいていは商業的な成功を目指して始まるわけではないため、権利関係が複雑になってしまうことも多い。同協会では、既存の著作権では扱いが難しいシーンにも対応し、新たなモデルを作っていければという。

 「自発的に盛り上がっているものを支えるには、中心に仕掛け人がいるこれまでのスキームとはまったく異なる支援が必要。考えたいのは儲け方よりも、いかに安心して伸び伸びと創作に打ち込んでもらえる環境を作るか」(クリプトンの伊藤社長)

 CDや書籍の販売数、カラオケランキングなどでもネット発コンテンツが上位を占め、メジャーシーンでのインパクトは高まり続けている。今世の中に求められているエンターテインメントのキーワードは「スキマ」ではないかと、横澤代表理事は話す。

 「ネット発のコンテンツは、完成された作品の良し悪しを評価するのではなく、足りないものを付け足したり、自分の好みを加えたりしてみんなでいじっていく余地があることが楽しさの源泉。“突っ込みどころ”(スキマ)を作るのがクリエイターの役目で、オーディエンスの反応も含めてコンテンツの力」(横澤代表理事)

 「ネットの1番の特徴は、本やCDといったパッケージとして1つに決まってしまう前の過程が可視化されること。ファン自身が前のめりになって参加意識を持っているのは大きな強みで、今後ますますその方向のエンターテインメントを求める傾向は強まっていくと思う」(KADOKAWAの井上専務)

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