匿名化ツール「Tor」を使って匿名で内部告発できるサイト「Whistleblowing.jp」(内部告発.jp)が、来年2月ごろの本格稼働を目指して準備を進めている。サイトはすでに構築済み。今後、告発を受け取るジャーナリストの確保など準備を進め、来年2月ごろの本格稼働を目指す。開発者で駿河台大学講師の八田真行さんは、「技術を使ってジャーナリズムの刷新に関与できればうれしい」と狙いを語る。
内部告発プラットフォーム用のフリーソフト「GlobaLeaks」を活用して構築した。URLは「http://4ge3uua3uaxuhhaq.onion」(Tor経由でのみアクセス可能)。現在は八田さんがダミーとしてジャーナリスト登録しているが、実際のジャーナリストは参加しておらず、デモサイトのような状態になっている。
告発者は同サイトに告発文や関連データをアップロードし、告発のジャンルと、送信先ジャーナリストを選んで送信する。Torを使っているため発信元をたどれず、告発者の匿名性が守られるのが特徴だ。ジャーナリストの元には、告発を伝えるメールが暗号化された状態で送られてくる。
告発時に16ケタの番号を発行。告発から2週間以内なら、サイト内のフォームに番号を入力すれば「内報」ページが表示され、告発内容を確認できるほか、ページ内のコメント欄を通じて告発者とジャーナリスト間で情報交換したり、告発者が追加の資料をアップロードできる。
来年1月中に、エンジニア向けハッカソンやジャーナリスト向けの使い方講習などを行い、参加ジャーナリストを確保。2月にも本格稼働させる計画だ。すでにマスメディアの記者を中心に15人ほどがサイトに関与しており、うち一部が受信者になることを表明しているという。
その後、継続的に運営できる体制作りを目指し、NPO団体化などによる組織化や、ジャーナリストの参加条件の整備、サーバ費用や万一の際の訴訟費用をまかなうための会費(年間で個人1万円、法人10万円程度を想定)徴収なども進めていく。
八田さんは以前から、ジャーナリズムへの匿名化技術や暗号化技術の導入に興味があったという。昨年ごろからTorを使った内部告発サイトが海外で設立されるようになり、「その流れに乗った」と開発の背景を説明する。
日本ではTorはPC遠隔操作事件で使われるなどマイナスイメージも強いが、「匿名化技術や暗号技術は、プライバシーや人権を守るなど社会的に有用な使い方ができる」と八田さん。「内部告発そのものにもネガティブなイメージがあるが、その印象を払拭し、「健康診断としての内部告発を確立したい」という。
同サイトの構想を10月に発表した際、一部で「日本版WikiLeaks」と報道されたが、WikiLeaksとは構造が異なるという。「WikiLeaksは自前でサイトを持ち、ジャーナリスト集団として運営していたが、Whistleblowing.jpは“土管”。運営者が中身を見る機会はまったくない」
主に企業や研究機関などからの内部告発を想定。12月に施行された特定秘密保護法との関係がメディアで取り沙汰されたが、「それほど関係あるとは思っていなかった」と話している。
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