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もう「原作と違う」と言わせない──2Dイラストをそのまま立体アニメにする「Live2D」 世界標準目指す(2/2 ページ)

» 2015年02月02日 11時00分 公開
[山崎春奈,ITmedia]
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 現行の「Live2D Cubism」では動きの幅が最大で上下左右30〜40度程度と限定的だったが、「Euclid」では複数の原画を変形しながら連携させることで、上下左右すべての角度で表情や動きを表現できるようになった。

photo 顔はLive2D、体は3Dで動かすことも

 デモ映像では、顔はLive2D、体は3DのキャラクターがRPG風のゲームフィールドで走り回る姿が公開されており、高度なスペックが要求されるゲームや、映画やアニメ、バーチャルリアリティ技術にも活用できるのでは――と今後の展望を話す。アニメーターやキャラクターデザイナーが作画技術を活かして立体造形ができるため、制作フローも変わってくるのではないかという。

日の目を見たのは創業5年

photo 中城哲也社長

 中城社長が京都大学在学中、神戸のベンチャー企業で働きながらアイデアを温め、起業したのが06年のこと。一度は近しい友人知人から出資を受けて勝負に出たが売り上げは立たず、集めた仲間を解雇しなければならない窮地にも陥りながら、受託開発をせず独自技術をビジネスの根幹にすることを貫いた。最初に日の目を見たのは11年、PSP用ゲーム「俺の妹がこんなに可愛いわけがない ポータブル」に搭載された。「実績がない新しい技術を理解してもらうのは予想以上に大変で……。技術だけは死守する、という想いでなんとか会社の存続を保っていました」と創業から5年間を振り返る。

 「クリエイターにとって絶対に良いものだ、世にあるべき技術だしニーズも必要も高まっていく、という強い信念があったから。いつか大きな会社が似たような技術を出した時に『そういえばLive2Dってあったよね』と言われるのは嫌だった(笑)。だったら続けるしかない」(中城社長)

photo 大学の研究室のようなオフィス

 「Euclid」を発表したことで、国内外から引き合いが増えており、「世界標準」を目指すLive2Dにとってはこれからが正念場だ。Kinectのモーションキャプチャでとった役者の動きをそのまま2Dキャラに重ねる、生放送の音声と連動しリアルタイムにキャラクターをしゃべらせる――など、大学や企業との共同研究を含めた技術開発も着々と進んでいる。

 「使った作品が増えていくことが一番の宣伝」と、今後伸びていく可能性に自信を見せる。海外の展示会でデモを見た親子が「ほら、お前の絵もいつか動かせるぞ」と話していたのが印象に残っているという。

 「『動けばいいのに』が『動かせるんだ』という確信に変わるのは絵描きにとって大きな違いだと思う。これからの子どもたちが当たり前のようにそう考えられるように、早く世界をとりたい」(中城社長)

“最終目標”はバガボンド映画化

photo 「pepita」(英語版)でアントニ・ガウディの肖像画を動かした

 中城社長の“最終目標”は、井上雄彦さんの漫画「バガボンド」の映画化だ。筆で描かれた独特のタッチは従来のアニメ化では難しいが、Live2Dを使えば原画の質感や空気感を損なうことなく動かすことができる。

 すでに同氏の作品「pepita」の英語版電子書籍で技術協力を行っており、本人に会った際にこの夢を話したという。井上先生だけでなく、絵を描く人すべてに、無理だと思っていたことが可能になった“その先”を見せられたら――。

 「Live2Dができるのは2Dコンテンツのパワーを極限まで引き出すこと。『バガボンド』のようにコンセプトや思想を明確に持っている漫画は、黒澤明監督作品のような大人が感動できる物語にできるはず。夢はアカデミー賞。……真剣です!」(中城社長)

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