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「調教いらず」CeVIOの新人歌手、熟女とおっさんを調教してみてわかったこと(1/4 ページ)

» 2015年03月19日 15時39分 公開
[松尾公也ITmedia]

 「VOCALOID」「UTAU」とは異なる歌声合成技術で、「Sinsy」の兄弟分である「CeVIO」に新しい歌手が加わった。JOYSOUNDのエクシングが投入した新しいバーチャルシンガー「Color Voice Series」の新人歌手たちをいち早く入手して使うことができたので、「調教いらず」とはいうものの、もっと思い通りに歌わせてみたいと、レビューを志願した。

photo Color Voice Series

 CeVIOは、HMM(隠れマルコフモデル)という、統計モデルを使った独特の歌声合成技術で、名古屋工業大学によって開発されたSinsyを基に、製品化されている。おしゃべりをするキャラクターとしては最初から複数いるが、歌手としてはながらく「さとうささら」1人だった。それがエクシングの参入により仲間が一気に増えた。

 第1弾であるロック系「赤咲 湊」とバラード系「緑咲 香澄」に続き、3月19日に発売される第2弾「銀咲 大和」「金咲 小春」はともに演歌、歌謡曲、フォークを得意とする。4月23日に第3弾として発売される男声「白咲 優大」は「優しく切ない」歌声で、バラード、ジャズ、アンビエントが得意。女声「黄咲 愛里」は「きらめく 芯のある」歌声で、ダンス、ポップス、R&Bなどのジャンル向き。

 改めて位置付けを確認すると、パワー系が「赤咲 湊」「黄咲 愛里」、バラード系が「緑咲 香澄」「白咲 優大」、昭和系が「銀咲 大和」「金咲 小春」となる。

まずは「赤咲 湊」「緑咲 香澄」を歌わせてみた

 「赤咲 湊」「緑咲 香澄」入手時に、こんな作例を投稿してみた。

 これはCeVIO初の男女デュエット曲。イスラエルのヘドバとダビデ「ナオミの夢」のカバーだ。「赤咲 湊」はかなりパンチのある、高音の出せるシンガーで、たしかにロック向き。この曲は「緑咲 香澄」の得意分野ではないが、一応こなしている。英語歌詞も入っているこの曲は、CeVIO新機能の作例としても使っている。

 「緑咲 香澄」には、得意ジャンルであるバラード曲も歌ってもらった。さとうささらも歌っているので比べたい人はどうぞ。ささらの歌声がちょっと明るすぎるのに対し、適度にウェットな感じで心地よい。

CeVIOの調教ってどうやるの?

 今回は開発途中版の「銀咲 大和」「金咲 小春」も試用できたので、その感想も織り交ぜながらCeVIOの調教方法を改めて解説しよう。

 CeVIOの調教については、製品版CeVIO Creative Studio発売時に一度レビューしている。基本的な動作はほぼ同じなので、こちらの記事で確認していただきたい

 VOCALOIDユーザー、UTAUユーザーがCeVIOを初めてさわるとき、まずとまどうポイントは、「シャクリ」の処理だろう。

 シャクリとは、歌い出しで低い音から高い音に急激に移行するテクニック。VOCALOIDでは「わー」と長く伸ばしながらシャクリ上げるときに、「わ」「ー」または「わ」「あ」と、音を分割して、最初の「わ」を低い音高にする「母音分割」を使うことが多い。CeVIOでもこのテクニックは使えるのだが、音符の細かさに限度があるうえ、音量の山も2つ分できてしまい、不自然に聞こえる場合がある。

 母音分割する場合には、後で音量やピッチの山をなだらかにするのだが、その手間が面倒ならば、最初から分割はせずに、ピッチカーブだけを描くほうがよいだろう。CeVIOのピッチカーブ描画は、元の線が緑色で残ったまま、上書きできるうえ、修正したところがオレンジ色になって後で修正・削除がたやすいので、VOCALOIDよりも直感的に使える。

 もう1つ、大きくVOCALOIDと違うのは、タイミングと長さの修正。VOCALOIDならば、音符を細かく左右に動かしたり、長さを調整したり簡単にできるが、CeVIOはそもそも思想が異なる。基本的に、通常モードの「NOR」で譜面通りに入力しないとうまく歌を解釈してくれないので、音符のタイミング、長さの細かい修正はしない。するとおかしくなってしまう。その代わり、別の「TMG」というモードで、編み物の目を少しずつずらすようにして調整するのだ。

 慣れると、子音と母音の境界、語尾の発音のなめらかさなど、とても細かいニュアンスまでコントロールできる。発音させたくない音は極端に短くして聞こえないようにすることも可能だ。

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