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パックマン美少女擬人化も“公認” バンダイナムコが「カタログIPオープン化」で模索するファンとの新しい関係(2/3 ページ)

» 2016年01月22日 11時00分 公開
[山崎春奈ITmedia]

 社内の声も踏まえ、同プロジェクトは(1)事前に法人・クリエイターの登録と簡易な企画審査が必須、(2)対象は国内在住者のみ、(3)作品公開は2020年3月末まで――という制限を設けている。発表当初は審査へのハードルの高さを指摘する向きもあったが、実際の運用では明らかに規定や趣旨に反さない限りほとんど落選させておらず、「OKを出すことを前提に、ユーザーの声やニーズを直接聞く場」(桝井さん)としてとらえているという。面談はバンダイナムコの本社で行い、新旧のキャラクター商品が並ぶ社屋を楽しんで帰る人も多い。

photo 「ゼビウス対ご当地怪獣ドキラ 世界の食いしん坊越後魚沼大集合!」(パパイヤ電池開発)
photo 「ゴシックは魔法乙女×カタログ IP コラボ」(ケイブ)

 新潟県魚沼地方を舞台に、ゼビウスの自機「ソルバルウ」がおにぎりを発射しながら地方創生を目指すゲーム、人間の美少女になったパックマンやマッピーが登場するアプリ、教育アプリのナビゲーションキャラクター、LINEスタンプ――など活用施策は多岐に渡る。最も使われているのはやはりパックマンだが、ゼビウスやマッピー、ワギャンランドなども人気だ。

 桝井さんは「“監修”という目で見ると『パックマンは踊りません!』『ソルバルウはおにぎりを撃ちません!』と言いたくなるわけですが、その気持ちをぐっと我慢して……」と笑いつつ、「愛着があるので心配をしだすときりがない、年ごろの娘を持つ親父のような気持ち。でも愛娘だからといって門限で縛り続けても成長しないし、むしろ可能性を狭めてるかもしれない。クリエイターのみなさんの自由なアイデアで新しい活躍を見られることがうれしい」と楽しげだ。

「バンダイナムコと仕事ができるなんて!」

 半年が経つが、申し込みのペースが落ちないのも予想外だった。「うちみたいな小さな会社でもいいんですか」「実は、同業他社から思ったより審査がゆるいと聞いて……」「他社の事例を見て、こんな企画でもOKが出るのか、とダメ元で応募してみた」など、審査の実態や社としての姿勢が口コミでじわじわと伝わっている実感があるという。「バンダイナムコと仕事ができるなんて思ってなかった」という言葉をもらえるのも「ありがたいこと」という。

 11月には、エントリーした法人などは200超(企業174社、学校法人17、個人開発者46人)に達し、うち76%が新規の取引先、25%がゲーム業界以外からのエントリーだった。教育事業、流通業、金融業、医療関係、タレント事務所など、これまで接点がなかった業界・業種からも打診があったことに驚いたという。

 「80年代のゲームをガッツリ遊んでくれていた人たちが今40代前後。客観的なビジネスニーズというより、『このゲームが本当に好きだった!』という気持ちで応募してくれてるケースが多く、愛と情熱を感じる」(桝井さん)

photo ハッカソン向けに新規素材開発も行った

 法人からの引き合いは多いものの、個人クリエイターとの接点がなかなかないことから、11月22〜23日にゲーム開発ハッカソン「Game Jam」を開催した。通常は提供していない2D素材、音楽素材を特別に用意し、「ワルキューレの冒険 時の鍵伝説」の新規3Dモデルは同イベントのために新規に開発。学生から50代まで50人超が素材を自由に使ったゲーム制作に取り組んだ。

 ハッカソンは同社としても初の試みだったが、生まれたゲームの開発を続けるべく本プロジェクトにエントリーする参加者も複数出るなど、手応えは大きかった。数的な指標だけでなく、開発者のニーズや悩みなどの生の声に迫れたのも収穫だったという。このプロジェクトに限らずコンテンツホルダーとして何を提供したら喜んでもらえるか、どのような関係を築いていけるかを深める契機になり、「僕らがやってることは間違いじゃないと確信できた」(桝井さん)。

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