アドビシステムズは「Adobe MAX Japan」で、開発中の4つのクリエイター向け新技術を初公開した。1つ目は2Dのイラストに点を打つだけで3Dモデルを作る技術、2つ目は写真から“ブラシ”を作る技術、3つ目はビデオや静止画に2Dエフェクトを足すだけで3Dシーンで使えるエフェクトを作る技術、そして4つ目が写真でつぶってしまった目を開く技術だ。
「2Dのイラストから3Dモデルを作る技術」は、米Adobe Systemsのテクニカルアーティスト・伊藤大地さんらが作った技術。顔の位置を緑の線で囲み、顔に緑の点を打つ。それらの点を、正面、右横顔、左横顔それぞれで同じ箇所の点とリンクさせ、「3D mesh」ボタンを押せば、3Dモデリングの知識がなくても2Dから3Dキャラクターを生成できるという。
点と点の間は直線で描かれ、点を多く打てば打つほどなめらかになる。点と点をリンクさせることで3Dモデリングするため、元となる写真の大きさがまちまちでも問題ない。
イラストだけでなく写真にも適応できる。また、人の顔以外にもハンバーガーや太巻き寿司といった食べ物の3Dモデルも作成できる。
この「点をリンクさせる」発想は、もともと数学が好きだった伊藤さんが昔思い付いたもので、2015年の夏ごろから開発をスタートさせたという。「テクニカルアーティストは、アーティストとリサーチャーのかけ橋。アーティストや一般ユーザーたちの声を聞いて、その人たちが必要とするプログラムを書いたりツールを作ったりするのが仕事になる」(伊藤さん)。
2つ目の技術は、写真から“ブラシ”を作る技術。好きな写真をクリックすると、その写真の模様がブラシツールとして使える。
例えば草の写真をクリックすると、その写真に写っている草の模様がそのままブラシツールとして使える。この技術のすごいところは、ブラシの向きを自動で認識、調整してくれること。犬の写真から犬の毛をブラシツールにすれば、毛並みを意識しながら犬の絵が描ける。
3つ目は、ビデオや静止画に特殊な2Dエフェクトを足すと、3Dシーンで使えるエフェクトを作れる技術。2D動画にこの技術を適用すると、2Dなのに不思議と3Dのように見えてしまうという加工技術だ。例えば、溶岩や煙などが3Dっぽく再現できるという。
そして4つ目が、写真の中でつぶってしまっている目を開く技術。目をつぶってしまっている人の過去の写真から、開いているものを自動で選び出して合成し、色補正、形状認識、角度補正を施して目を開けてくれる。
これらの技術はそれぞれ、約3〜5人のプロジェクトチームで開発されているとのこと。ただし今のところ、どの製品に入るかも、そもそも製品に入るかどうかさえも決まっていない。リリース時期も何もかも全てが未定だからこそ、クリエイターたちが妄想を膨らませる楽しみがある。
(太田智美)
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