ジョブズはディランについてこう語っている:「私のロールモデルの1つはボブ・ディランなんだ。彼が書いた全ての歌詞を学んだことで、ディランがひと時も静止していないことがわかった」
「1つのことをずっとやっていれば成功が約束されるという時が来るけど、失敗のリスクを取って挑戦を続ければアーティストのままでいられる」
「ディランとピカソは常に失敗のリスクを取って挑戦し続けた。これは私がAppleでやっていることだよ」
1998年11月の発言だ。この前までにジョブズはAppleの立て直しでMicrosoftとの関係修復、PRでThink different.キャンペーン(CMには入っていないが、ポスターにはディラン版もある)、Macintoshクローンへのライセンス停止、製品ラインの絞り込み、在庫管理の最適化を実施している。この在庫管理で実力を発揮したのがCompaqから移籍したティム・クック現CEOだ。
ボンダイブルーのiMacは成功を収めたが、Macintoshを動かすための次期エンジンであるOS Xは2年先。まだまだ苦しい戦いは続く。そんな時代での発言。
3年後、iTunesを発表し、そのための音楽デバイスiPodは4年後、そしてiTunes Music Store、さらにiPhone。エレキギターに持ち替え罵声を浴びながら音楽を変貌させていったディランのように、リスクを冒して挑戦は続けられた。
そして、こうした製品をデモするジョブズはしばしばディランの音楽とともにあった。
iTunes、iPod、iPhoneのデモをジョブズ自身が行ったときに使った曲では、ボブ・ディラン(とビートルズ)が多い。彼らは特別扱いなのだ。そこだけを抽出したYouTubeビデオもある。
ジョブズがプレゼンで使ったディランの曲や、ウォルター・アイザックソンによる伝記で言及された楽曲を「Bob Dylan Songs Steve Jobs Loved」というプレイリストにまとめてみた。全13曲。どれも名曲なので、ディラン入門としてもいいかもしれない。アルバムの年代順、アルバムでの曲順に並べてある。Spotifyのフリー版ではランダム再生になるけど。
この中で、"Subterranean Homesick Blues"と"Like A Rolling Stone"は、テクノロジーカンファレンスAll Things Dの2004年と2007年でそれぞれジョブズの登場時に使われた曲。アブドーラ・ザ・ブッチャーの「吹けよ風、呼べよ嵐」とかプロレスラーの入場テーマ曲みたいな感じだ。ちなみに2003年では、ビートルズの"Revolution"が使われている。
"Like A Rolling Stone"はデモでも何度も使っているから本当に好きなんだなあ。アルバムでは「追憶のハイウェイ'61」が最多。
"One Too Many Mornings"は、ジョブズ自身が好きだとディランに語ったという曲。2004年10月、ジョブズは初めてディランに会い2時間語り合った。その後ディランがシリコンバレーでコンサートを行ったとき、ジョブズが好きなこの曲を歌ったという。
最後にこれはオマケみたいな感じだけど、ディランが出演したiPodとiTunesのCMがある。2006年のアルバム「Modern Times」の楽曲"Someday Baby"だ。ディランの弾き語りと交互に白いイヤフォンをした女性が踊っている。iTunes Storeでの先行予約などのタイアップもあって、ディラン復活(何度目だ?)を強く印象付けるビルボード1位を果たした。この頃は日本のソニーミュージックがiTunes Store鎖国をしていたからこのCM、日本では流れなかった。
ボブ・ディランがAppleとIBM、両方のCMに出演しているってのもおもしろい。
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