小説家・夏目漱石の遺体から顔型をかたどって作られたロボット「漱石アンドロイド」が12月10日、「夏目漱石国際シンポジウム」で初めて一般公開された。漱石アンドロイドは、大阪大学の石黒浩教授監修のもと、二松学舎大学大学院文学研究科の研究チームが製作したもの。朝日新聞社が所有する漱石のデスマスクを3Dスキャンし、そこから得た情報を基に各部位のサイズなどを割り出し作成したという。
漱石アンドロイドは、漱石作品を朗読したり、講演を再現したりするプログラムを搭載。本人の文学や性格から動きを研究し、アンドロイドに反映しているという。
声は漱石の子孫である夏目房之介さんが担当。房之介さんの声を録音し、いったん音素分解したものを再合成して人工音声を完成させた。
モデルは旧千円札に描かれた45歳ごろの漱石。洋服は当時の写真と文献資料から考察する一方で、早稲田大学理工学術院石川研究室にモノクロ写真のカラー化(関連記事)を依頼。その画像を基に生地の色を決定したという。
アンドロイド本体と機構部の製作は、「マツコロイド」などの開発でも知られるエーラボが担当。皮膚には人間と似た触感と変形力、耐久性を併せ持つ「エーラボオリジナルシリコン樹脂」を採用している。実際に漱石アンドロイドの手に触れてみると、そのリアルな湿気にぞくっとした。
動作カ所は44カ所(頭部13カ所、頸部3カ所、左手腕部12カ所、右手腕部12カ所、胴体部4カ所)。空気圧アクチュエーターが埋め込まれており、表情を変化させたり身体を動かしたりできる。片方の目には、眼球カメラを搭載。髪は人毛かつら(一部植毛)を用いている。
今後は教育現場での活用を目指し、漱石アンドロイドによる学校の講義といった取り組みを予定している。漱石をモチーフにした人工知能“漱石AI”が完成した際には、漱石アンドロイドに搭載する可能性もあるという。
多くのロボット展示会とは異なり、漱石アンドロイドの初の一般公開には、昔から夏目漱石ファンだという年上の女性の姿が多くみられた。彼女たちは漱石アンドロイドを目の前に「ふんふん」とうなずき、まるで夏目漱石本人の話に耳を傾けるように聞き入っていた。
(太田智美)
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