テレビ東京系の人気番組「開運!なんでも鑑定団」で「国宝級」と鑑定された後、視聴者から「偽物では」と疑問が出ていた茶碗について、実物の成分を分析した結果を、奈良大学がこのほど発表した。
調査の結果、偽物に使われる釉薬(ゆうやく)の成分は含まれていなかったという。「この調査で本物とは証明できないが、偽物という人達が主張しているようなものではないことは確実になった」としている。
茶碗をめぐっては、番組で「国宝級の曜変天目。2500万円相当の価値がある」と鑑定されたが、番組を見た人から疑問が続出。陶芸家の長江惣吉さんは「陶磁器用の釉薬絵の具を塗った偽物では」と指摘していた。
同大文学部文化財学科は、茶碗の所有者から相談を受け、実物を調査。文化財を傷つけずに元素を調べられる「蛍光X線分析装置」を使い、茶碗の成分を調べた。
偽物なら、発色させるための釉薬が使われているはずだが、調査の結果、発色の原因と考えられるような元素は検出されず、赤、青、緑、白(黄)、黒のどの色に見える部分も、含まれる元素には大きな違いはなかったという。
同大は、「この調査で茶碗が本物だとは証明できないが、偽物だと言う人達が主張しているような物ではないことは確実になった」と指摘している。
調査前、持ち主から話を聞く中で、「偽物だと言っている人たちは実物をまったく見ずに言っていることを知り、文化財調査の原則である、自分の目で実物を観ることがないまま真贋を云々することに疑問を感じた」とし、今回の例を通じて「文化財の調査に臨む姿勢として、何かを感じ取っていただければ幸い」としている。
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