「にこにこうぱうぱブルーベリー」「白い川と落ち合うバラード 初夏のりんごが憧れそうで」――これは、とあるアイドルの最新曲の歌詞だ。今年4月に曲が発表されると、ネット上では「不思議だけど、どこかすてき」「言葉選びが独特」などの声が上がったが、それもそのはず。作詞者は人間ではない。人工知能(AI)だ。
曲名は「電☆アドベンチャー」。アイドルグループ「仮面女子」と電気通信大学がタッグを組んで制作した。仮面女子が歌う別の曲「超☆アドベンチャー」をベースに、メンバーが曲をイメージした絵を描き、その色合いからAIが歌詞を付けたという(関連記事)。
「私が歌詞を考えることはできないが、AI技術を使えば誰でも作詞者になれる」――そう話すのは、電気通信大学の坂本真樹教授。不思議な歌詞はどのように作られたのか、制作の裏側を聞いた。
歌詞作りのきっかけは偶然だった。坂本教授が仮面女子と初めて出会ったのは、2016年8月のこと。大学などが研究成果を披露する展示会「イノベーション・ジャパン」で、坂本研究室のブースに仮面女子の月野もあさんが立ち寄ったことが発端だ。
坂本教授は、人間が感じる「質感」の研究をしている。「サラサラした“布”」「サラサラした“紙”」というように、人は違うものにも共通する特徴を見いだして言葉にする。逆に「“サラサラ”した肌」「“ツルツル”した肌」などと、同じものでも人によって異なる表現をする場合もある。
人は触ったり見たりしてものの状態を把握し、「高級感」「自然感」なども感じ取れる。そんな感性のプロセスをAIを使って分析できれば、人間が何に価値を見いだしているか、どんな行動選択をするかを明らかにできる――というのだ。
「研究成果を使って、仮面女子さんとコラボレーションできないか。面白いことができないか」――そう考えた坂本教授が注目したのは「歌詞づくり」だった。
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