身近な例として「プレミアムビール」を挙げてみましょう。
国税庁の調査によれば、多くの方が感じているようにビールの市場は年々縮小傾向です(参考:酒のしおり(平成29年3月))。価格の安い発泡酒や新ジャンルとも呼ばれるリキュール類が台頭する中で、相対的に価格の高いビールの価値を提案するという事は非常に大変なことだと容易に想像ができます。そもそも税率が異なるため、価格競争では厳しい状況になることが目に見えています。
プレミアムビールは、逆転の発想で「素材にこだわり」「嗜好性が高く」「価値の高い商品」を提供することで、価格競争を見事に回避したといえるでしょう。以下に示したグラフにある通り、多くのお客さまに選ばれて市場を確立していると考えられます。
製造者の視点では、素材や製造法にこだわった最高の商品を市場に送り出すことができる一方、酒類の販売店は単価が下落して価格競争の激しい商品よりも、商品性によって選ばれる高単価な商品を扱うほうが好都合。
消費者にとっても、週末やちょっとした特別な日にこだわりのビールを堪能したり、贈答品として少しこだわったものを送ったりしたいときにぴったりかもしれません。
メーカーと販売店、そして消費者にとって非常によい解決策であることが分かります。
PCの話に戻りましょう。PCの販売台数推移を見ると、Windows XPの移行期に少しだけ増加に転じたものの、残念ながらスマートフォンやタブレットの普及に押されながら年々縮小傾向です。
PC本体の単価も下落傾向で、普及レンジの製品では3万円台という商品も存在します。出荷台数が減少し、単価も下落しているとすれば、良い方向ではない事が容易に想像がつきます。
しかし、この連載のメインテーマでもあるように、現在においてPCが人々の生産性向上や創造的な仕事を成し遂げるために欠かせないツールである事は、誰もが認識している通りです。
世界的なトレンドを見ると、1980年以降に誕生した“ミレニアルズ世代”が2020年には働き手のおよそ50%を占めるとも予測されており、これからの世界を担う中心的な世代になるといわれています。
これらの世代はスマートフォンやタブレットのようなスマートデバイスを使いこなし、あふれる情報の中から自分にあうモノであるのか、投資するに値するものであるのかを合理的に考えます。
PCに求めるものが最小限であれば、ミニマムな性能の低価格な製品を選択するでしょうし、所有することによりワクワクできるようなモノを求める場合は、素材や機能性、デザインに優れた上質なものを選ぶでしょう。
そして、働き方の柔軟性が当たり前に求められる中で「モビリティ」(携帯性)がますます重要視されます。
このような市場の変化に応じる形でメーカーもPCのデザインと性能、そして携帯性にこだわった付加価値の高い商品を提供することで応えようとしています。
結果として、デザインにこだわるために素材から吟味し、最高の結果を得られるための形状やパーツ、機能美を追求した結果、プレミアムPCが誕生したのです。
そしてプレミアム製品が担う、もう1つの重要な役割があります。それは次世代への継承です。
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