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ドイツ発の“AI人事”は何が違う? 企業成長にAIが役立つ理由“日本が知らない”海外のIT(1/2 ページ)

» 2017年08月07日 07時00分 公開
[細谷元ITmedia]

AIでチーム最適化、ベルリン発スタートアップ「Bunch」

 AI(人工知能)は、サービス案内から株式市場分析まで、社会のさまざまなシーンで活躍が期待されているが、企業の人材採用でもその可能性に注目が集まっている。

 米IBMが世界の企業幹部を対象にした調査では、最高経営責任者と人事部門責任者の過半数以上が、コグニティブ・コンピューティングが人事部門に大きな影響を与えると考えていることが明らかになった。コグニティブ・コンピューティングとは、「IBM Watson」のように、会話や分析などができるシステムのこと。

 人材採用においてAIを使う強みは、膨大な学習データから通常は定量化が難しい「性格」や「思考のクセ」などを見える化すること。採用候補者の中から、ポジション・チームに最適な人材を探し出せるようになるだろう。

連載:“日本が知らない”海外のIT

日本にまだ上陸していない、IT関連サービス・製品を紹介する連載。国外を拠点に活動するライター陣が、日本にいるだけでは気付かない海外のIT事情をお届けする。


 ドイツ・ベルリン発のスタートアップ「Bunch」は、まさにこのAIの強みを生かしたサービスをローンチし注目を集めている。Bunchが提供するのは、企業が生き残っていくために必要なチームを構成するための最適化サービスだ。

Bunch ドイツ・ベルリン発のスタートアップ「Bunch」

 機械学習を活用し、経営層、既存社員の特性を分析し、組織・チームが現在どのようなカルチャーを持っているのかを明らかにする。もしそのカルチャーがイノベーションを起こすのに好ましいものではないと判断された場合、チーム編成を変更したり、新たなメンバーを補充したりして最適化しようとするもの。

 具体的にどのようなプロセスで最適化するのか。

 まず、組織の現状のカルチャーを分析するために、組織・チームメンバーそれぞれが10分程度の「カルチャーアセスメント」を受ける。このカルチャーアセスメントは、対象者の価値観や好みのワークスタイルに関する短い質問で構成されており、その人のカルチャーを評価することを目的としている。

 アセスメント後、各メンバーが持つカルチャーが6つの軸で評価される。これら6つの軸は、結果志向、几帳面(きちょうめん)、協力的、顧客志向、適応的、原則志向だ。各メンバーの分析結果からチーム全体としてどのようなカルチャーなのかを明らかにする。

 チーム全体として原則志向が強い場合、バランスを取るために適応的な人を入れたり、几帳面さが弱いなら几帳面な人を採用したりと、最適化が可能となる。

アセスメント 各メンバーの特性から、チーム全体のカルチャーを可視化できる

なぜ組織・チームの最適化が必要なのか

 Bunchが組織・チーム最適化の基盤としているのが、スタンフォード経営大学院・組織行動論の権威、チャールズ・オライリー教授の研究だ。

 オライリー教授は、成長を続ける企業には相応のカルチャーが根付いていると主張する。特に、適応性の高いカルチャーがある企業は長期の成長を実現できるという。

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