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超小型衛星50機打ち上げへ アクセルスペース、1.5億円の赤字「NOKIZAL」決算ピックアップ

» 2017年09月06日 13時00分 公開
[NOKIZALITmedia]

(編集部注)本記事は、執筆時に公開されていた決算公告に基づいたものです。

 超小型衛星を開発するアクセルスペース(東京都中央区)が9月6日、官報に掲載した2017年5月期(16年6月〜17年5月)決算公告によれば、当期純損失は1億5600万円の赤字(昨年同期は1億1400万円の赤字)、累積の利益や損失の指標となる利益剰余金は2億5900万円の赤字(昨年同期は1億200万円の赤字)だった。

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 アクセルスペースは08年設立。東京大学と東京工業大学が開発した技術をもとに、低コストで100キロ以下の超小型衛星を開発している。

 従来の人工衛星は国と大手メーカー、日本だとJAXA(宇宙航空研究開発機構)や三菱重工などが協力し、数トンある大型衛星を打ち上げるのが一般的だった。しかし同社は超小型衛星の開発に絞り、人件費や開発期間を圧縮。部品にも市販品を活用するなど試行錯誤して、大型衛星では数百億円かかっていたコストを100分の1レベルの数億円にまで引き下げることに成功したという。

 15年には総額19億円を資金調達。22年までに50機の衛星を打ち上げ、地球上全陸地の45%(ほぼ全人類の経済活動範囲)を毎日撮影する計画「AxelGlobe」を掲げている。17年7月には、気象情報配信大手のウェザーニューズと共同開発した「WNISAT-1R」を打ち上げ、運用をスタート。18年にはJAXAから受注した「革新的衛星技術実証1号機」の打ち上げを予定している。

ここがポイント

 秋葉原で売っているような部品と工夫で宇宙へ――というロマンに感動しつつ、同社のビジネスモデルに注目してみましょう。ウェザーニューズと共同開発した「WNISAT-1R」は北極海の海氷を観測しています。その目的は、温暖化の影響で溶けた氷を避けて北極海を運行したい海運業者にナビゲーションを提供するためです。

 例えば、日本からヨーロッパへ運航する際、北極海を渡ってショートカットできると、マラッカ海峡・スエズ運河経由と比べて輸送距離は3分の2になり、輸送コストを削減できるそうです。ですが、従来の衛星写真は1平方キロ当たり数万円と高価だったため、そういった目的には適しません。そこでコスパ重視の超小型衛星の活用というわけです。

 他にも、農業では収穫時期や肥料の配布状況を把握できるなど、さまざまな分野に応用の可能性があります。将来は自社衛星に加え、他の衛星やドローンの画像を取り込んでAPIとして公開、誰でも衛星画像をリーズナブルに使用できるようなプラットフォームを目指すとしています。

 考えてみれば、インターネットの初期は自社サーバを構えるだけで莫大なコストをかけていたわけで、いずれAWS(Amazon Web Services)のように人工衛星をサービスとしてシェアして、それを基盤に新しいビジネスが次々と生まれるような世界が待っているのかもしれません。

訂正履歴:当初、アクセルスペースの本社所在地を「東京都渋谷区」としていましたが、正しくは「中央区」でした。お詫びして訂正いたします。[2017/9/11 10:30]

アクセルスペースの過去業績、他の企業情報は「NOKIZAL」で確認できます

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《著者紹介》

平野健児。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの「SiteStock」や無料家計簿アプリ「ReceReco」他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業し「NOKIZAL」を運営中。

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