日本銀行・黒田東彦総裁の記者会見での表情を、人工知能(AI)で解析した結果、大きな金融政策変更を行う前には「怒り」「嫌悪」の割合が増大していた――こんな内容の論文を、野村証券の水門善之氏と米Microsoftの勇大地氏が公開し、注目を集めている。
解析には、「日経チャンネル」(日本経済新聞社が運営)で公開されている日銀総裁記者会見の動画を活用。約0.5秒ごとにスクリーンショットを撮って画像データを作成し、Microsoft表情認識アルゴリズム(Microsoft Cognitive Services Emotion API)で解析した。「喜び」「怒り」「悲しみ」「驚き」「恐怖」「軽蔑」「嫌悪感」「中立」の各感情の度合いを指数化し、割合を算出した。
その結果、マイナス金利政策の導入など重大な金融政策変更を行う直前の記者会見では、「怒り」や「嫌悪」の割合が高くなる傾向が見られた。また、それらの金融政策変更に向けて「悲しみ」の割合が上昇を続け、金融政策変更を決定した後の記者会見では、「悲しみ」の割合が低下する傾向だったという。
表情の変化について研究チームは、「金融政策変更前は、既存の金融政策に対する問題意識の高まりがネガティブな表情として表れていた可能性があり、変更後は、それが緩和されたことによる安堵が表情に表れていた可能性がある」と考察。「表情解析に基づく情報が金融政策の先行きを考える上で有用な材料となり得ることを示唆している」とみている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR