芸術に気軽に親しめるGoogleのアプリ「Arts & Culture」に、自分のセルフィー写真をアップロードすると似た肖像画を提示してくれる新機能が追加され、話題になっています。米国で。そう、この機能は米国でしかまだ使えません。
「まずは米国でリリース」というのはよくあることですが、この機能については提供地域を広げる前に、データの偏りの調整も必要かもしれないと、米Diggが書いています。
米国は人種のるつぼなので、いろんな人種の人がいるわけですが、どうも肖像画のデータとしてアジア系やアフリカ系が少ないようなのです。
TwitterやInstagramで#GoogleArtsandCultureを検索すると、結果を楽しそうに公開しているのはほとんどが白人。
アジア系の“平たい顔族”のわずかな投稿では、例えば中国Long Museumの「Portrait of a Lady in Pink」だという結果が3つもありました。それぞれ、アジア系だということ以外は、あまり似ていないように見えます。あと、男性でも浮世絵の女性の顔だったり。
Diggによると、どうやら協力してくれている美術館のアートデータに、そもそもアジア系やアフリカ系の肖像が少ないようです。
Googleの中の人に人種差別の思想がなくても、結果的に「差別だ!」と言われかねません。
Googleは画像認識技術ではFacebookやMicrosoftとトップを争う企業ですが、人の顔を扱うのはダイバーシティや倫理、プライバシーの問題と隣合わせで難しそうです。
男性なのに浮世絵の芸者に似ているという結果になる程度なら、まだ笑っていられますが、例えばゴリラとかサルの絵が結果として表示されたら怒る人もいそうです。
ゴリラといえば、2015年に「Googleフォト」が黒人女性の写真に「ゴリラ」タグを付けたことが問題になりました。
Googleはこのとき、謝罪して改善すると約束しましたが、2年経って苦しい“改善”をしました。タグから「ゴリラ」「チンパンジー」などを削除したのです(米Wiredより)。
Wiredが多数のゴリラやチンパンジーの画像をアップロードして試した結果をGoogleに示して問い合わせたところ、Googleがそれらのキーワードをブロックしたことを認めました。「画像のラベリング技術はまだ黎明期で、残念ながら完成には程遠い」とGoogleさん。
つまり、Googleほどの技術力がある企業が2年かけても、AIが人間をゴリラだと思っちゃうのを阻止できなかったということみたいです。
画像認識の精度を上げるには膨大な量のデータが必要。最初は残念な結果になっても怒らないから、日本でも早く新機能を使えるようにしてほしいです。
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