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» 2018年06月21日 06時00分 公開

AI時代に生き残る人たち 私たちは“AI人材”を目指すべきなのか(2/3 ページ)

[松本健太郎ITmedia]

AI人材になるには、何を学べばいいか?

 ここまで読み進めて、ふと疑問に感じた人も居るでしょう。AI人材を名乗るには、人工知能を学べる大学を卒業していなければならないのでしょうか。大学を既に卒業した私のようなおじさんは、もうAI人材を名乗ることは許されないのでしょうか。

 実は、政府は社会人を対象とした学び直し(リカレント教育)に力を入れようとしています。総合科学技術・イノベーション会議において、社会人の学び直しによって年間2500人程度のAI人材を輩出しようとしています。

 注目すべき内容としては、未来投資会議構造改革徹底推進会合第5回において「AI人材育成について」と題して、さまざまな案が記載されています。

 私が注目している1つが、東京大学と大阪大学の協業により開設された即戦力人材の育成講座(AIデータフロンティアコース)です。「AI技術の研究開発に係る即戦力人材を育成するための汎用的な教育プログラム」が提供されており、毎週土曜日、みっちりと授業が組み込まれているようです。

 講義概要を見てみると、CS(コンピュータサイエンス)テストを受けた後に、人工知能基礎、統計的機械学習、自然言語処理(単語の分散表現、リカレントニューラルネットワーク、言語モデル、品詞タグ付け、構文解析、畳み込みニューラルネットワーク、文書分類、機械翻訳、質問応答)、コンピュータビジョン(特徴抽出、畳み込みニューラルネットワーク、物体認識、物体検出、画像検索、領域分割、画像生成、行動認識、顔画像認識、画像・映像記述[言語融合])が学べるようです。

 相当濃密な授業に思えますが、よくよく考えると、こうした授業よりもっと濃密な講義を学生らは受講しているのです。試しに東京大学大学院情報理工工学系研究科の時間割・講義内容をのぞいてみましょう。新人が独学で学ぶにはハードルが高すぎる講義がズラッと並びます。

 こうした理論と実践を学んだ学生たちをAI人材と呼ぶことに対しては、何ら違和感を抱きません。抱きようがありません。すげー(小並感)、という感想しか出ません。

 そう考えると、結局は「AI人材になるための社会人の学び直し」というのも、「人工知能に興味持ったから触ってみたい」というモチベーションだけではダメで、必要最低限のプログラミングスキルや数学の知識がなければ、講義を受けてもチンプンカンプンで終わってしまう可能性がありそうです。

 ちなみにAI人材を目指すことに対して楽観的な見方もあります。いや、諦観していると言ってもいいでしょう。

 「そこまで努力しなくても、市場で求められるAIスキルは通り一遍の統計学や機械学習が分かっていれば十分。中にはExcelで対応できる場合だってある。それだけ努力しても、国内企業で努力に報いた給料を渡せる企業がどれくらいありますか?」

 この指摘は一理あるのです。

 求人情報検索サイト「indeed」を使って「AI」に関する求人を調べてみると、約1万2000件ヒットします。そして、年収400万円以下に絞っても約3000件ヒットします(18年6月20日時点)。AI人材になるのに今まで挙げたような学習が必要なのに、その対価が上限年収400万円以下とはどう考えても割に合いません。

 AIと言いたいだけか、市場相場を知らないか、やって欲しい業務が全く分解できていないか、いずれなのでしょうか。

 政府においても、「何だかなぁ」感は拭えません。

 「未来投資戦略2018」と題した成長戦略の中で、「生産性を最大限に発揮できる働き方の実現」の1つとして「労働者が、健康を確保しつつ、自律的に働き創造性を最大限に発揮することを支援するため、高度プロフェッショナル制度を創設する」と主張しています。

 私は、要件を満たす高年収な専門職を労働基準法が定める労働時間の規制対象から外す「高度プロフェッショナル制度」には反対の立場です。制度導入のためにAIを人質にしてほしくないと思います。

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