その狙いについて運営会社のチェン・ヤンリー(Chen Jianli)CEOは、中国国内のテーマパーク市場は競争が激化しており、ブームになりつつあるVRで勝負に出たとしている。VRをアトラクションに用いれば、マンネリ化した今までのテーマパークとは一線を画すエンターテインメントを提供できるという考えだ。
またチェンCEOは、このテーマパークでVRやAR(拡張現実)といったイマーシブ・テクノロジー(没入型技術)について大衆により深く理解してもらい、これらのテクノロジーで何ができるのかを知ってもらいとも話す。
チェンCEOが「ブームになりつつある」と語る中国VRマーケットの状況は実際どうか。
確かに、中国はアジア諸国の中で特に盛り上がりを見せている国の1つである。中国のVRマーケット規模は20年までに84億米ドル(約9470億円)に到達すると、中国工業情報化省傘下のシンクタンクであるCCIDが発表している。
VRやARなどの新テクノロジーを組み込んだテーマパークのアトラクションにフォーカスした国際博覧会「Asia Amusement & Attraction Expo」も毎年同国で開催されている。
しかし、消費者レベルで見るとまだ普及していないといわれている。それは単にVRヘッドセットが高額であることや、コンテンツの数が不十分であることだけでなく、同国の文化も関係しているようだ。
最も大きな影響を与えているものの1つとして、中国政府が2000年から「若者の身体および精神の発達に害を及ぼす可能性がある」という理由でゲーム機の製造・販売を約15年間禁止してきたことを指摘する声もある。現在は解禁されたとはいえ、ゲームソフトへの検閲は続いている。
こうした政策に加え、1979年から2015年までの36年間続いた一人っ子政策の影響で、子どもの学力向上を重視する親たちの多くは、ゲーム自体に対して嫌悪感を抱いているといわれる。また、これは日本にも共通する課題だが、中国の自宅にはVRを思う存分に楽しめる広々とした部屋がないこともその背景の1つではないだろうか。
そうした中で、テーマパークとは別にVRマーケットを盛り上げようとしているのが「VRカフェ」だ。台湾を拠点にVRヘッドセット「Vive」を開発するHTCは、「VR元年」と言われた16年後半以降、中国各地にVRカフェ「Vive VR Cafe」を展開している。
Vive VR Cafeの他にも、ふらっと立ち寄り、1回のゲームプレイごとに料金を支払えばよい気軽なカフェや、カラオケボックスのようにグループで利用するカフェもあるという。このようなVRカフェがゲームセンターのようにいくつもオープンしているのだ。
VRカフェも冒頭で紹介したテーマパークも、スペースが限られた自宅では利用しづらいVRを消費者に体験してもらいやすくする場といえる。テーマパークに限っていえば、家族で楽しめるため、それまでゲームに感じていた後ろめたさが和らぐという人もいるだろう。
このように中国では今、テーマパーク業界やハードウェア業界の企業たちがVRマーケットを盛り上げようとしている。果たして、中国はVRマーケットでも「大国」としての存在感を示せるだろうか。
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