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正しく知れば怖くない GDPRの基本と対策のポイントをIIJが解説“日本が知らない”海外のIT(番外編)(4/5 ページ)

» 2018年08月01日 06時00分 公開
[水迫尚子ITmedia]

 FacebookやGoogleなど、インターネット上で無料サービスを提供している業界が大きな試練に立たされています。なぜ、これらのサービスが無料で成り立っているのでしょうか。それは、閲覧による個人の行動を追跡してターゲティング広告を打っているからです。つまり、インターネット上の無料サービスの多くは行動ターゲティング広告に依存しているのです。

 GDPRが施行された5月25日当日、オーストリアの弁護士マックス・シュレムス氏が、ヨーロッパ各国のデータ保護監督機関に対して、FacebookやGoogle、Twitterなどを訴えました

noyb プライバシー保護のための非営利団体noyb会長のマックス・シュレムス氏(画像:noyb.eu)

 これらの企業は、個人データ処理への同意をサービス提供の条件としたり、さまざまな行動分析で最適な広告を表示することをサービス提供条件としています。サービス提供条件に不当な条件を抱き合わせているというのがシュレムス氏の立論で、まさに、ターゲティング広告を無料サービスの財源としている企業への挑戦状です。

 一方で、TwitterでもFacebookでも、人々の生活やつながりを促進したという、社外的な貢献は公平な目で見れば認めるべきだと思います。言い方は悪いですが、プライバシーを売ることで便益を得ているというのは一面の真理です。

 昨今、ソーシャルメディアは民間企業の運営ながら、携帯電話、固定電話に匹敵する社会インフラになっている部分があります。民主主義の根幹を成す情報インフラといえなくもありません。現にアメリカの大統領は、ホワイトハウスでの記者会見よりはるかに多くの情報をTwitterで流しています。条件が気に入らなければソーシャルメディアを利用しなければいいという理屈にどこまで説得力があるでしょうか。

FB 米Facebookの2018年4〜6月期決算によると、欧州でのMAU(月間アクティブユーザー数)が前期より100万人減り、GDPRの影響が見られる(関連記事

 議論は熟成しておらず、当分、結論は出せない問題だと思いますが、今まで体験したことがない難しい課題に、世界をあげて取り組んでいかねばならないというのは確かです。

── GDPRの制定は、根本的な問題に一石を投じているのですね。

 そうです。EUは個人データのフェアな扱いを法律で制定するほどプライバシーの尊重に価値を置いています。一方で、資本主義が高度に発展したアメリカでは、プライバシーを売ることで便利になるなら、それが個人の選択である限り、それでいいじゃないかという考えもあります

 そんな中、6月28日に、米カリフォルニア州で消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act)が議会で可決されました。この保護法では、個人データ収集の処理方法などを知りたいと求められた場合に企業に説明義務が生じ、消費者はマーケティング目的のデータ処理をやめさせる権利があるというオプトアウト方式です。ヨーロッパとアメリカでは、個人データ保護に関する考え方にかなり違いがあります。この違いは、今後、アメリカとヨーロッパ間の大きな通商摩擦、文化摩擦のテーマになるのではと思います。

GDPRの順守=顧客を大切にすること

── 日本における個人データ保護の考え方はどうですか。

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