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あなたのサービスは大丈夫? メルカリに学ぶ、CtoCサービスで気を付けるべき「資金決済法」の罠「STORIA法律事務所」ブログ(1/2 ページ)

» 2018年09月18日 07時00分 公開
[杉浦健二ITmedia]

この記事は「STORIA法律事務所」のブログに掲載された「メルカリ事例で学ぶ、CtoCサービスにおける資金決済法の罠」(2018年9月11日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。

 2017年12月、フリマアプリ「メルカリ」を運営するメルカリは取引ルールを変更し、それまで出品者は販売で得られた売上金を1年間は引き出さずにメルカリに預けられていたところ、新ルールではこの預かり期間を90日間に短縮しました。

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 また、売上金を直接使用した商品購入ができなくなり、代わりに商品を購入できるポイントと交換したうえで、ポイントで商品を購入する手順に変更しました(ポイントは換金不可)。

 これらの新ルールへの変更は、メルカリの従前のビジネスモデルが資金決済法で定める「資金移動業者」に該当する可能性を指摘されたためと考えられます。

 メルカリのみならず、サービス利用者間での代金支払を伴うCtoCビジネスにおいては、資金決済法に抵触しないかを常に意識する必要があります。今回取り上げるメルカリのルール変更事例は、資金決済法(資金移動業者)を学ぶ格好の教材であるため、少し前の話ですが取り上げて解説します。

資金移動業者に該当すれば、資産保全義務などの義務が課される

 銀行等以外の一般事業者が、顧客から依頼を受けて資金を移動するサービス(為替取引※)を行う場合、「資金移動業者」として登録する必要があります(資金決済法第37条、第2条2項3項)。

 (※為替取引…最決平成13年3月12日は、為替取引について「隔地者間で直接現金を輸送せず に資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行すること」と定義しています)

 為替取引(顧客から依頼を受けて資金を移動する振込送金のようなサービス)は、従来は銀行等でなければ行えませんでしたが、2010年に施行された資金決済法により、1回あたりの送金額が100万円以下であれば「資金移動業者」に限って行えることになりました。

 資金移動業者の登録を受けたサービスとして代表的なのは、LINE PAYYahoo!ウォレットが挙げられます。

 利用者の資金を預かるという性質上、資金移動業者としての登録が認められるためには、事業者に資産保全義務などが課せられます。

 資金移動業者に課せられる資産保全義務とは、利用者の資産を保護するために、送金サービスで受領した金額の100%以上の額を供託させる義務のことです(法43条2項3項)。供託に代えて、一定の銀行等との間で履行保証金を供託する旨の契約(履行保証金保全契約)や信託会社等と履行保証金信託契約を締結することも認められています。

 さらに資金移動業者に当たる場合、利用者のアカウントを開設する際に運転免許証等による本人確認も要することになります(本人確認義務、犯罪収益移転防止法4条)。

ポイントは、いかに資金移動業にあたらないサービスを構築するか

 このようにサービスが資金移動業だと判断されると、資産保全義務や本人確認義務などのさまざまな規制を課されます。資金移動業者として登録が認められるためには、一定の財産的基礎や業務遂行体制等の整備が求められることからも(法40条)、潤沢なキャッシュがあるとはいえず管理体制も十分に整っているとはいえないベンチャー企業にとって、資金移動業者登録のハードルは相当に高いものといえます。

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