―― アーンツ論文では、デジタル化に対応できない人の失職の可能性が示唆されており、50代以上の人材の再教育が重要なトピックになっています。
再教育はすごく大事なこと。いまiPS細胞の取材をしていて、京都大学の山中伸弥教授にも何度か会っている。今から何十年かたつとあらゆる病気が全部治る可能性があり、人間の平均寿命は120歳になるかもしれないらしい。定年が60歳として、あと60年をどう生きるのかは大きな問題。
あと60年間生きるためには再教育が必要だろう。人工知能がどうこうより、70代、80代、90代とどう生きていけばいいのかが問題だ。
―― 田原さんが人工知能にポジティブな印象を持っている一方で、新聞やテレビなどでは「仕事を奪うもの」とネガティブな面が語られることもあります。
人工知能は世の中を変えていくものだが、マスコミは変化を嫌うもの。新聞の広告収入はどんどん下がり、いまやネットの方が優位になっている。部数が減ると収入が減り、取材費もどんどん減らされる。いまのジャーナリズムはそうした問題を解決しないといけない。
―― われわれ含め、人工知能に関する正しい知識を世間に伝えるメディア側にも責任がある。
落合陽一とか堀江貴文とかドワンゴ人工知能研究所の山川宏とか、こういう世の中を変えようとしている人たちに関心持って会わなきゃ。あなたも会う努力をしなきゃいけない。
―― ありがとうございます。田原さんは個人で活躍する人だけでなく、大企業にも取材されています。日本の大企業は変化を嫌うといわれていますが、それについてはどうですか。
例えば銀行の役割はだんだん成立しなくなる。元来、銀行は貸し付けでもうけていたのに貸付量は減っている。なぜなら日本の成長が止まっていて、設備投資をしないから。それだと銀行はもうからなくなるが、だから面白い。まさに変わらないといけないでしょ。変わることを面白いと思うか、良くないと思うかだ。
大企業の経営者は、変わらなきゃ生き残れないという危機感だけは持っている。でも社員は変わってほしくない。現場は、自分たちの仕事が否定されるのは大反対だから。
新聞で言えば、記者たちは今までやってきた経験とキャリアはなるべく変えたくない。テレビもそうだし、自民党だってそうだ。上層部や幹部は変わらないといけないと思っている。上の人間はものすごく危機感を持っているが、議員の多くは当選さえすればいいから変えたくはない。もちろん、国会議員の中でも小泉進次郎のように変わらなきゃいけないと思っている人もいる。
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