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映画「ミッション:インポッシブル」5作品の“セキュリティ突破方法”を考察してみた架空世界で「認証」を知る(2/3 ページ)

» 2019年01月07日 08時00分 公開
[朽木海ITmedia]

声紋認証を録音した声で突破?

 第2作「ミッション:インポッシブル2 (M:I-2)」は、ジョン・ウー監督による派手なアクションと緻密なストーリー構成で話題となった。マスクによる変装が多用されており、第3回「架空世界の生体認証」で紹介した「フェイス/オフ」を彷彿(ほうふつ)とさせる。

 肝心の認証システムを突破する場面はあまり出てこないのだが、終盤に声紋認証による鍵の付いた扉を開けるシーンがある。ここを録音した音声であっさりと突破してしまっているのだ。

 さて、録音した音声で声紋認証を突破できるのだろうか?

 実際のところ、声紋認証では突破を100%阻止はできないという状況のようだ。ただ、電話越しやMP3による録音では波形が変わってしまうため突破できない。相当高精度で録音した音声を使用しないといけない。当然、高精度な認証システムに対しては、それだけ高精度な録音が必要となる。

 現在、声紋認証をメインにしている認証システムをあまり見かけないのは、録音による突破の危険性に加えて、自分の声でも誤認識も多いのが課題となっているからだ。「誰が操作しようとしているのか」という程度の認識には使えても、確実な認証には使いづらい……というのが現実だろう。

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監視カメラをだます古典的な手口

 第3作「ミッション:インポッシブル3(M:i:III)」も、J・J・エイブラムス監督による巧みなストーリーテリングでヒットしたが、システム的な認証という面で言うと、ほとんどそうした場面が登場しない。ただ、その中でちょっと気になるシーンがあったので紹介しておこう。

 イーサンたちがバチカンに潜入するシーン。当然ながらバチカンは非常に高度なセキュリティが敷かれており、怪しい者が立ち入る余地はない。イーサンは壁を伝って侵入しようとするが、監視カメラがあるのでこのままでは見つかってしまう。そこで、一瞬監視カメラを写らないようにして、監視カメラからの風景を撮影し、監視カメラのレンズの前に撮影した風景の写真を置くことで、写真の後ろ側で起こることを見せないようにすると言う古典的な手口を使うのだ。

 これだと機械をだますことは難しいが、人間の目視では、ぱっと見分からないので、短時間の潜入でだますには好都合だろう。こうしたことを防ぐには、立体的な映像で確認する3Dカメラを使ったり、赤外線などで深度を測るカメラを併用したりしなくてはならない。当時のバチカンの警備システムがそこまでに至っていなかったのかどうかは実際には分からないが……。

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 このシーンだけでなく、シリーズを通して認証システムよりも人間の目による認証をだますシーンの方が多く登場する。マスクや制服などの見た目でだまして潜入するのは、イーサンたちエージェントにとっては基本的な技術なのだ。

ICカード認証をハッキングで突破

 うって変わって第4作「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」では認証が活躍する場面が多数登場する。監督はブラッド・バード

 IMF本部とコンタクトする際に公衆電話から虹彩認証の装置が出てきたり、やはり秘密基地となる列車の車両に乗り込むときに虹彩認証が用いられたりと、この時代では虹彩認証が主流となっているらしい。そんな中、筆者が気になったのは、ICカード型の所有物認証を突破する際のシーンだ。

 本来は正しいICカードを持ってないといけないのだが、IMFのエージェント達は当然持っていない。そこで秘密兵器の登場だ。ICカードとスマートフォンが一体となったような装置を挿入し、システムにハッキングを仕掛け、一瞬で突破してしまう。

 実際こういうことが可能かどうかというと難しいところだが、システムの脆弱性が存在すれば、それを突いて侵入することは可能かもしれない。これは接触型認証であるICカードだけでなく、非接触認証の所有物認証でも当然起こりうると考えた方が良いだろう。常に脆弱性情報に気をつけ、新しいシステムにアップデートしておくことが大切だ。

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