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Google、大手クラウドに“反発”していたOSSベンダーと戦略的提携Google Cloud Next '19

» 2019年04月10日 13時27分 公開
[新野淳一ITmedia]

この記事は新野淳一氏のブログ「Publickey」に掲載された「[速報]Google、大手クラウドに不満を表明していたMongoDB、RedisらOSSベンダと戦略的提携。Google CloudにOSSベンダのマネージドサービスを統合。Google Cloud Next '19」(2019年4月10日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。

 米Googleはサンフランシスコでイベント「Google Cloud Next '19」を開催。4月9日(日本時間4月10日未明)に行ったオープニングキーノートで、MongoDB、Redis、Confluent、Elasticをはじめとするオープンソースソフトウェア(OSS)ベンダーとの戦略的提携を発表しました

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 提携相手はConfluent、DataStax、Elastic、InfluxData、MongoDB、Neo4j、Redis Labsの7社。

 この提携の下で、Googleはオープンソースソフトウェアベンダーが提供するマネージドサービスをGoogle Cloudに統合。ユーザーはGoogle Cloudの管理コンソールからオープンソースソフトウェアベンダーのマネージドサービスを導入、管理でき、課金、サポート窓口もGoogle Cloudに一本化されます。

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 Google Cloudのコンソールからサービスを導入可能。

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 稼働状況の把握もできます。

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 「私たちはこれらパートナーをサポートし、(Googleの)テクノロジーを用いることで成功をパートナーと共有していく。新しい形のオープンソースコミュニティーを育て、その発展をより確実なものとし、成長するための受け皿を作っていく」(Google Cloud部門CEOのトーマス・クリアン氏)

大手クラウドベンダーに不満を表明し始めていたOSSベンダー

 この提携の背後にあったのは、昨年に表面化した、オープンソースソフトウェアの開発元からクラウドベンダーへの不満でした。これによりクラウドベンダーによるオープンソースの商用利用を制限する動きが相次ぎました。

 Redisの開発元「Redis Labs」は、2018年8月に同社が開発したRedis拡張モジュールに関するライセンスの変更を発表。2018年10月にはMongoDBの開発元もライセンスを変更。いずれも商用サービスでの利用に制限がかかりました。

 12月にはKafkaの開発元であるConfluentも一部のコンポーネントのライセンスを変更し、商用サービスでの利用を制限しました。

 これらはいずれも、大手クラウドベンダーがオープンソースを使ったマネージドサービスを提供していることに開発元が反発したためです。

 MongoDB社の共同創業者兼CTOのエリオット・ホロウィッツ氏は次のようにブログに書いています。

オープンソースプロジェクトにとってサービスで得られる収入は、大事な資金源となり得ます。しかし現実は、あるオープンソースプロジェクトが人気になると、コミュニティーには全く、あるいはほんの少しだけしか貢献していない大規模クラウドベンダーがあっさりとその大部分を獲得していくのです。

 例えばAmazon Web Services(AWS)はMongoDB互換のサービス「Amazon DocumentDB」など、オープンソースを用いたさまざまなサービスを提供しています。

 Googleも例外ではなく、例えばGoogle CloudではRedisをベースにしたマネージドサービス「Cloud Memorystore」などを提供しています。

 こうした状況については下記の記事でまとめていますので、あわせてご覧ください。

反発するOSSベンダーへのGoogleからの回答がこの戦略的提携

 今回のGoogleによるオープンソースソフトウェアベンダーとの戦略的提携は、こうした反発に対するGoogleとしての回答だといえます。Google Cloud部門CEOのトーマス・クリアン氏はオープニングキーノートで次のように語っています。

このところオープンソースコミュニティーは、クラウドプロバイダーが彼らと協力せず、オープンソースによるマネタイズを行おうとしているのだ、と見なしています。私たちGoogleとしては、この状況は顧客にも、デベロッパーコミュニティーにも、ソフトウェアのイノベーションにもよくないと確信します。そこで私たちは主要なオープンソース企業と提携し、新しいやり方でオープンソースをデベロッパーコミュニティーやカスタマーへ提供することにしたのです

 提携発表時には、この提携に参加する6つのベンダーのCEOが動画で登場。

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 さらにステージにはRedis Labs CEO オフェル・ベンガル氏が登場し、次のようにコメントしました。

この戦略的な取り組みは私たちにとって素晴らしいものです。ご存じの通りオープンソースのマネタイジングはオープンソースベンダーにとって大きな課題であり、とりわけこのクラウド時代には問題です。そうした中で、オープンソースに取り組んできたクラウドベンダーであるGoogleの新しい取り組みは、オープンソースコミュニティーにとってビッグニュースだと思います」

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 ベンガル氏は、Redisのマネージドサービスの競合であるGoogle CloudのMemorystoreについても、顧客に選択肢を提供できるものとして歓迎するコメントをしています。

あるユースケースではGoogle CloudのネイティブサービスであるMemorystoreが向いているし、より洗練された、アクティブ/アクティブ構成やマルチデータモデルを利用する場合にはRedis Enterpriseが向いているでしょう

 この提携によってGoogleは、大手クラウドに反発していた主要オープンソースソフトウェアベンダーを見事に(そして分かる範囲では不満を表明した全てのベンダーを)パートナーへと変えていったように見えます。果たして、AWSやMicrosoft Azureなどほかの大手クラウドはこれからどう動くでしょうか。

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