炎上対策会社「MiTERU」を立ち上げたネットウォッチャー、おおつねまさふみ氏によるリスクマネジメント連載。今回は炎上と正義の関係について。
インターネットの世界のなかで「炎上」は、もはや365日いつでもどこでも見られる現象だ。事の大小はあるものの、何らかの炎上が、つねにどこかで「観測」できるといってもよい。
そうしたネット炎上は、いったいなぜ起こるのか、火を点けるのはどういう人なのか。20年以上にわたってネット上の森羅万象を見聞きして得た知見をもとに、改めて考えてみた。
そもそもネット炎上は、どのように生まれていくのか。簡単にまとめておくと、おおよそ次のような段階を踏んでいく。
第1段階 事象発生
例えば著名人などが、何らかの発言・失言、不謹慎な行動を起こす。
第2段階 発見・指摘
その行為を見つけた第三者が「これは酷い」「不謹慎だ」とソーシャルメディアなどを通じて指摘する。
第3段階 共感・共有
その指摘に同意する人が多数あらわれ、リツイートやシェアなどで拡散する。
第4段階 拡散
指摘や意見・異議が数多く拡散されたことがネットニュースなどを通じて、さらに拡散され、広く認知されるようになる。
多くの場合、この第4段階まで進んだところで「炎上案件」と呼ばれる。ここまで来ると、もはや元の事象とは関係が薄くなり「炎上しているから炎上している」状態になる。「みんなが叩いているから叩いていい」という”お祭り状態”になってしまうわけだ。
ここで注目すべきなのは、第2段階だ。事象を発見して指摘する人がどんな人なのか、である。
炎上という結果からみると、そもそも最初から悪意のある「悪質な人」と思いがちだ。粘着質で、他人の揚げ足を取るのが好きな「荒らし」のような人だというふうに。とりわけ炎上した事象を起こした当事者であれば、そんなふうに思い込むことが多いだろう。
しかし実際には、大抵の炎上案件を、最初に発見・指摘する人というのは「悪質な人」ではない。もちろん、まったくゼロというわけではないが、そうした悪意のある人は意外に少なく、むしろ「正義感が強い人」が最初に火種を作るケースのほうが圧倒的に多いのだ。
第3段階の、共感する人たちの多くも同じだ。炎上させようという明確な意思を持った人は少ない。単純に「指摘のとおりだ」と感じて同意するということを表明しているにすぎない。ただ、その発信の場がSNSという気軽に扱えるツールであるがゆえに、比較的軽い気持ちで同意している人も少なからずいるだろう。とはいえ、基本的には悪意のある人より、正義感が強い人のほうが圧倒的に多い。
この「正義感が強い人」というのは、あくまでも善意の人である。
不公平や不正を見逃さないし、失礼な発言や行為は許せない。自分が属している集団内の秩序を守りたいーーという、社会通念上はきわめて真面目な「ふつうの人」なのだ。
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