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大量のbotが作った「架空の交通渋滞」 イスラエルで起きたハッキングと人間の「反脆弱性」(1/4 ページ)

» 2019年08月05日 07時00分 公開

 今回は、2014年にイスラエルのカーナビアプリ「Waze」(ウェイズ)がハッキングされた例を基に、AIとサイバーセキュリティの関係について考えてみたいと思います。

著者プロフィール

安藤 類央(あんどう るお)

国立情報学研究所 サイバーセキュリティ研究開発センター特任准教授。 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程卒業後、 国立研究開発法人情報通信研究機構に入所。 情報セキュリティ、ネットワークセキュリティの研究開発に従事。 2016年に国立情報学研究所に入所。現在に至る。

大量のbotが作った「架空の交通渋滞」

 Wazeは、イスラエルのベンチャー企業Waze Mobileが開発したカーナビアプリで、13年に米Googleが買収したことでも話題になりました。位置情報(GPS)を活用しており、クラウドを介して利用者同士でリアルタイムに渋滞状況を共有できるのが特徴です。

 Wazeは、利用者のスマートフォンから位置情報を取得してクルマごとの経路や走行速度を把握し、道路・交通状況を推測しています。また、利用者は交通事故や障害物、スピード違反の取り締まり、ガソリン価格などの情報もシェアできるので、交通量の多い都市では非常に便利なサービスといえるでしょう。

「Waze」公式サイトより

 このようなサービスは、サイバーセキュリティの視点でどのような問題をはらんでいるのでしょうか。2014年に、テクニオン・イスラエル工科大学の研究グループが興味深い実験をしました(英文資料、PDF)。

 研究グループの学生たちは、プログラムを書いて一種の靴下人形(ソック・パペット)を量産しました。靴下人形とは、文字通り靴下で作った人形のことで、手を入れて口を動かすことであたかも人形がしゃべっているかのように見せられます。インターネットでは靴下人形は自作自演、つまり不正な多重アカウントなどを指すことが多いです。SNS上でも大量の靴下人形が散見されることでしょう。

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