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» 2019年08月29日 11時00分 公開

プログラミング教育実施直前の夏休み、教員も研修中

2020年度の小学校でのプログラミング教育必修化を前に、現場に立つ教員はどのような準備をしているのか。都内の小学校で行われた研修会で当事者に話を聞いた。

[谷井将人,ITmedia]

 2020年度から小学校でプログラミング教育が本格スタートする。必修化前の最後の夏休みを迎えた今、全国の自治体では教員向けの研修会が多く開かれている。外部からは「実施に向けた準備に遅れが生じている」「自治体ごとにPC環境や教員の理解度が異なる」などの課題も指摘されているが、現場に立つ教員はどのような準備をしているのか。都内の小学校で行われた研修会に参加して当事者に話を聞いた。

photo 研修の様子

教員もプログラミングツールの使い方や授業展開を学ぶ

 8月中旬、落合第二小学校(東京都新宿区)で行われた研修会には、同校の管理職や特別支援学級の担任も含めた全学年の教員約30人が参加。それぞれ1台ずつ用意されたWindows搭載タブレットPCを使い、教育向けのプログラミングツール「Scratch」(スクラッチ)や「Viscuit」(ビスケット)の操作方法、授業での使いどころなどを学んだ。

 教員は外部講師の指導を受けながら、プログラムを書いてCGキャラクターの動かしたり、試行錯誤しながら思い通りの挙動になるまでプログラムを書き直したりしてツールの使い方を習得していく。

 プログラミングツールの基本操作を学んだ後は「Scratchを使って正三角形を作図しよう」という実際の授業を想定したケーススタディーを行う。例えば、「PCに正三角形を書かせる」という課題が与えられた場合、コードを書いて実際に三角形を出力するのは最終目標ではない。「まずは始点を設定する」「辺の長さや内角の角度はどう設定するか」など、正三角形を書くのに必要な手続きを洗い出し、上手に動くように考えてフローチャートを組む作業が重要だという。

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 想定されるプログラミング授業の導入部分では、「そもそも正三角形はどうやって書くのか」という算数の振り返りから始め、子供にプログラムを書く準備をさせる。研修ではプログラムが早く組めた子供に「より短く書くには」「四角形以上の図形を描くには」といった発展的な課題を提示するなど、教員がどのように授業を進めるべきかの具体的なテクニックの共有もあった。

研修会はプログラミング教育に対する現場の不安から

 研修会の需要が伸びている背景には、プログラミング教育に対する現場の不安がある。一つは教員のITスキルだ。教員の指導スキルにプログラミングが必要になったのは最近の話であることは明らかで、多くの教員はプログラムを学んだことがない。

 落合第二小学校も「教員にもプログラミングやITのスキルには差がある。研修を実施して差を減らし、教育の質を保証したい」という理由で研修を行っている。

 ITスキルの差は子供にもあるが、2010年前後に生まれた今の小学生は、生まれたときから身の回りに電子機器があるデジタルネイティブだ。現場の教員から見ても、大人よりIT機器に慣れていて、機器の基本操作を教えることはあまり難しくないという。

 とはいえ小学校の授業は1コマ45分しかない。時間を最大限に使ってプログラミングを教えるためには、タブレットPCやアプリの操作、キーボードでのローマ字入力、データの保存方法など、基本的な操作スキルは子供全員が身に付けていることを前提に進める必要もある。19年度からPCの基本操作を少しずつ教えて、授業の本格化までに基本スキルを習得させるなど対策も考えられている。

 さらに子供の活動をいかに評価するかも悩みどころだという。プログラミング教育は、プログラムのでき自体に成績を付けるものではないが、授業を受ける前と後で思考にどのような変化があったかを評価するのは難しい。

技術を扱う力はリテラシーに

 プログラミング教育は課題ばかりではない。AIの登場や高度な情報化社会を前にして、子供に論理的な思考を身につけさせる面でもプログラミング教育にはメリットがある。

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 そのうちの一つは教材の魅力だ。タブレットやアプリを使った授業は子供がゲーム感覚で授業に参加できる。純粋に食いつきもよく、主体的に学ばせられるキッカケ作りに効果的だという。

 子供たちは、プログラムが上手に動かない場合に自然に周囲の子供と互いにアドバイスし合いながら勉強するようになり、協調的な学習の機会を提供しやすいことも分かった。

 落合第二小学校では特別支援学級でもプログラミング教育の実施を検討している。研修を受けた教員は、「特別支援学級ではもともと、見通しの立たない作業を前に子供が混乱しないよう、物事を順序立てて行動するような指導をしている。プログラミング的思考は普段の生活でも役立つ考え方なので、特別支援学級の生徒との相性は良い」と話す。

 ITや情報を扱う力は、生活する上で必要不可欠なリテラシーになった。教育現場のIT環境など、プログラミング教育にはまだ課題があるが、研修に参加した教員は「これからの時代は何を使うにしてもプログラミング的な思考が必要な世界が来る」と語り、プログラミング教育に期待を寄せていた。

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