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リクナビ「内定辞退予測」問題、厚労相が見解 「職安法違反あれば厳正に指導」

» 2019年08月29日 19時47分 公開
[ITmedia]

 根本匠厚生労働大臣は8月27日の定例記者会見で、就職情報サイト「リクナビ」運営元のリクルートキャリアが、学生から十分な同意を得ないまま内定辞退率を予測・販売していた問題に言及した。根本大臣は「一般論として」と前置きした上で、「(所管する)職業安定法などへの違反が認められた場合には、厚生労働省として厳正に指導などを行うことになる」と述べた。

 今後について根本厚労相は、「個人情報の取り扱いなどの観点のみではなく、就職活動を行う学生の不安にも目配りしながら、必要な対応を行っていきたい」と説明した。

photo 会見で頭を下げる、リクルートキャリアの小林大三社長(=左)と浅野和之執行役員(=右)

26日には個人情報保護委から勧告・指導

 問題になっているサービスは、リクルートキャリアが18年3月〜19年8月に提供していた「リクナビDMPフォロー」。

 (1)顧客企業から応募者の個人情報(19年2月まではCookie情報、3月以降は氏名など)を提供してもらう、(2)リクナビの持つ情報と照合し、利用ブラウザや個人を特定する、(3)行動履歴を過去のリクナビユーザーのものと照合し、内定辞退率のスコアを算出する――という仕組みで、スコアを34社に納品したという。

(関連記事:詳報・リクナビ問題 「内定辞退予測」なぜ始めた? 運営元社長が経緯を告白

photo 「リクナビDMPフォロー」の仕組み(リクルートキャリアのIR資料より)

 だが、リクナビのプライバシーポリシーに不備があり、一部の学生から事前に同意を得ないまま、顧客企業と個人情報やスコアをやりとりしていたことが8月2日に発覚。4日にサービス廃止を余儀なくされた。26日には、事態を重く見た個人情報保護委員会から、経営陣を含む全社的な意識改革などの措置を講じるよう勧告・指導を受けた。

 リクルートキャリアの小林大三社長は26日に開いた記者会見で「学生への配慮と、社内のガバナンス(企業統治)が不足していた」と不備を認め、「学生や大学、企業関係者の皆さまにご迷惑をおかけしたことを深くおわびする」と謝罪していた。

「内定辞退予測」に職安法違反の可能性

 会見での根本厚労相による発言は、一連の事態を踏まえたもの。職安法の適切な運用のために厚労省が定めた指針には次のように記されているが、リクルートキャリアはこれらに違反した可能性がある。

 「職業紹介事業者等は、個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、又は本人の同意の下で本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段によらなければならない」(運用指針 第4の1の2)

 「募集情報等提供事業を行う者は、労働者となろうとする者の個人情報の収集、保管及び使用を行うに当たっては、第四の一を踏まえること」(運用指針 第6の2の2)

 リクルートキャリアは内定辞退率の算出に当たって、自社で集めた個人情報の他、顧客企業から入手した応募者のCookie情報、氏名、大学名、学部名などを利用していた。また、プライバシーポリシーに不備があり、一部の学生からは十分な同意を得ないまま、個人情報を基に内定辞退率を算出・販売していた。

 厚労省は今後、こうした個人情報の収集・保管・使用のプロセスが、「本人の同意の下」で行われた「適法かつ公正な手段」に該当するか――という点などを精査し、指導を検討するとみられる。

photo 根本厚労相による発言(=厚生労働省の公式サイトより)

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