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「クリエイターの情熱を伝えたい」 異色のゲーム情報サイト「電ファミニコゲーマー」編集長の信念(1/2 ページ)

» 2019年09月06日 07時00分 公開
[村上万純ITmedia]

 著名なゲームクリエイターへのインタビューなど、他では見られない独自の“深掘り記事”を掲載し、コアなファンを獲得しているのが、ゲーム情報サイト「電ファミニコゲーマー」(電ファミ)だ。電ファミは2016年に創刊。当初はゲーム関連ニュースのキュレーションサイトという位置付けで、「niconico」「電撃」「ファミ通」「4Gamer」から情報提供を受けていた。

 しかし、編集長の平信一さんが17年に「正直な話をすると、このサイトの確固たるビジネスモデルはまだない」との見解を同サイト上で発信するなど、収益化に苦戦する様子をうかがわせていた。そんな電ファミは2019年7月にドワンゴの運営を離れ、平さんが立ち上げた会社「マレ」で事業を引き継ぐ形に。現在は、読者向けの有料オンラインサロン運営の他、スポンサー企業として名乗りを上げたディー・エヌ・エー(DeNA)から活動資金を得るなど、新たなマネタイズ方法を模索している。

 長年ゲームメディア運営に携わってきた平さんは、SNSや動画が普及したことで「メディアの求心力が弱くなり、ゲームメディアに求められる役割が変わってきた」と話す。ゲーム開発者イベント「CEDEC 2019」(9月4日、パシフィコ横浜)で、平さんがゲームメディアとしての電ファミにかける思いについて語った。

「商業メディアにしかできない役割がある」

電ファミニコゲーマー編集長の平信一さん

 平さんは「従来はゲーム雑誌がゲームを売るための力を持っていたが、いまはプライオリティの高い媒体ではなくなってしまった」と話す。平さんが14年に独自にまとめた資料によると、ゲーム雑誌の部数は年々減少し、その代わりに05年頃からまとめブログやゲーム情報サイト、攻略サイトなどのネットメディアが台頭。いまはYouTubeなど動画サイトにおけるゲーム実況も、ゲームシーンを語る上では欠かせない存在になってきた。ゲームクリエイター本人がSNSで作品について情報発信することも増え、「情報の在り方が中央集権的ではなくなり、メディアの求心力が弱くなってきた」と感じているという。

 電ファミは「ゲームを作る人の面白さや情熱を伝えたい」をモットーに、コンテンツ業界全体に響くような記事作りを目指している。ゲームクリエイターやゲーム業界に向けた情報発信に注力しており、コンシューマー向けの記事もあるが、どちらかといえば業界紙のような位置付けだ。

 そんな中、「ゲームを売るという目的以外の情報発信が、メディアの価値の1つになるはず」と平さんは指摘する。従来のゲーム雑誌は新作ゲームの発売に合わせてその最新情報を発信したり、クリエイターにインタビューしたりしていたが、そうではない形でそれぞれのゲームが持つ面白さや特徴を言語化し、ゲームファンに伝えたいという。「ゲーム会社は自社のオウンドメディアで発信するのが当たり前の時代ではあるが、良い質問、厳しい質問を含めて第三者が(取材を)やれるのが良い関係だと思う。プロモーションに関係ないからと取材を断られることもあるが、ゲーム会社の広報には、発売日に合わせたPR以外の情報発信についても意識してほしい」(平さん)

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