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本当に量子アニーリングは「巡回セールスマン問題」が解けないのか? 東北大・大関准教授の視点(4/4 ページ)

» 2019年11月20日 19時30分 公開
[井上輝一ITmedia]
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 フォルクスワーゲンが行ったのは、中国の北京国際空港と北京の中心街を結ぶ幹線道路のタクシー渋滞を、量子アニーリングを用いて解消する試みで、2017年に論文を発表。ヒートマップで、渋滞を緩和した様子を視覚的に示しました。

左が最適化前、右が最適化後。トラフィックが分散しているのが分かる(フォルクスワーゲンとD-Wave Systemsの資料より

 「この問題では、それぞれのタクシーが3つのルートから1つを選ぶと考えて、1台に3つのビットを割り当てる。例えば0,0,1なら右のルートを選択するといった具合。ここで、別の場所から来たもう1台のタクシーBが1,0,0で左のルートを選んだとする。すると、先ほどのタクシーAと同じ道を走ってしまうため、渋滞が発生すると考える」

 「こういう場合には、Aの3番目の量子ビットとBの1番目の量子ビットが同時に1にならないような相互作用を設定し、『同じ道を通るのは避けなさい』と決めておく。このように複数のタクシーの相互作用を関数に取り入れて、量子アニーリングで解いて見せたのがフォルクスワーゲンの例だった」

 交通渋滞は、クルマどうしの衝突(物理プロセス)と考えられるから、量子アニーリングに向いていると大関准教授はいいます。さらに、大関准教授は巡回セールスマン問題と比べたメリットを示します。

 「フォルクスワーゲンの例で、量子アニーリングマシンが計算をしくじり、あるタクシーのルートが0,1,1になってしまったとする。巡回セールスマン問題だったらこのような例は後処理しようがなかったが、タクシーだったらとりあえず真ん中か右かのルートに行ってしまえばいい。出てきた解をとりあえず使えるという意味でも、交通渋滞の問題は量子アニーリングに向いている」

 大関准教授は、「交通渋滞の問題ではなくても、巡回セールスマン問題ほどは条件が厳しくなく、それでいてタクシーのような複数の要素が絡む問題であれば量子アニーリングで解いてみる価値がある。そういう問題を解いてみてほしい」と語りました。

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