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液体のりの成分で、がん治療の効果向上 東工大が発見

» 2020年01月23日 14時53分 公開
[ITmedia]

 東京工業大学は1月23日、液体のりの主成分を加えた薬剤を用い、がんの放射線治療の効果を高めることに成功したと発表した。液体のりや洗濯のりなどに広く使われるポリビニルアルコールを薬剤に取り入れ、がん細胞に長時間とどまりやすくした。マウスを使った実験では、皮下腫瘍をほぼ消失できたという。

 実験では、放射線療法の一種である「ホウ素中性子捕捉療法」(BNCT)を採用した。まずホウ素化合物の薬剤を投与し、体内のがん細胞に取り込ませた上で、体外から中性子線を照射。するとホウ素と核反応を起こし、アルファ線が出てがん細胞を破壊する──という仕組みだ。ただ、これまではがん細胞に薬剤が長くとどまらず、治療効果が弱まってしまう課題があった。

photo 治療方法のイメージ

 そこで研究チームが、薬剤にポリビニルアルコールを加えたところ、がん細胞に取り込まれるホウ素量が約3倍に向上し、とどまる時間も長くなると分かった。マウスを使った実験では、中性子の照射から20日以上経過しても腫瘍の体積が増えないなど、従来手法と比べて高い効果を確認できたという。

photo 実験の結果

 今後は、BNCT用のホウ素化合物を開発しているステラファーマ(大阪市)などの協力を得て研究を進め、人への臨床応用を目指す。

 研究成果は、オンライン科学誌「Science Advances」に22日付(米国東部時間)で掲載された。

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