VR空間にたたずむKDDIの高橋誠社長を見たとき、記者は時代の変化を感じた。KDDIは3月23日、スタートアップとの5G共同プロジェクトを発表するイベント「MUGENLABO DAY 2020」をバーチャルイベントとして開催した。高橋社長が自身の姿を再現したリアルアバターで“バーチャル高橋社長”となり、VR空間でスライドや動画を見せながらプレゼンテーションを行った。
MUGENLABO DAY 2020は当初、リアルイベントとして開催を予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を予防するため予定を変更。クラスター(東京都品川区)の、VR空間に人が集まれるバーチャルイベントサービス「cluster」を活用し、視聴者はVRゴーグルやYouTubeのライブ配信で発表会を見られた。
記者も会社からゲーミングPCとVRゴーグルを使って参加したが、VR発表会自体に興奮を覚えた一方で、「動画配信との差別化が足りない」「他の作業が平行しにくい」など課題も感じた。
記者はバーチャルイベントをVRで体験したところ、愉快な場面がいくつもあった。ステージにはバーチャル高橋社長や司会のアナウンサーがアバターで登壇したが、VR機器の操作に慣れていないのか、話している最中にアバターがあらぬ方向に走り去っていく場面もあった。おかげで内容には集中できなかったが、バーチャルイベントの過渡期ならではの楽しさがあった。
バーチャルイベントは会場に足を運ぶ必要がない。VRで参加する場合はVR機器のセッティングが必要だが、慣れていればすぐに会場入りできるだろう。とはいえ単なる動画のライブ配信なら配信URLをクリックするだけで見られるため、VRよりも圧倒的に早いし手軽だ。移動も機器のセッティングも必要ない。
企業の発表会であれば、特別な理由がない限りはVRではなく動画配信で十分だと感じた。VRは参加者に没入感を与えられるが、資料のスライドを見せるだけなら没入感は重要ではない。VRの没入感が生きてくるのは音楽ライブやスポーツなど、会場の盛り上がりが重要になるイベントだろう。
VRの強みを生かすのであれば、リアルイベントを超える体験を提供する必要がありそうだ。例えば、新製品の3Dモデルを参加者それぞれが自由に手元で見られたり、あらかじめ撮影した360度の動画や正確にスキャンされた建物の3Dデータを使って新施設を内部から疑似体験する──などだ。
将来は企業が発表会を開催するコストとして、会場費ではなく会場や新製品などの3Dモデルを準備する費用が発生するかもしれないと記者は想像した。
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